終止符を君の手で
砂川恭子
プロローグ
三人のはたらきもの
むかしむかし、ルカーナの神が世界をつくって間もないころ。
小さな村に働き者の三兄弟が暮らしていました。
長男は勇敢で村を危険から守り、次男は豊富な知識で村の暮らしを発展させました。
動物好きな三男はそんな二人を尊敬し、村の人とともに支えていました。
平和を好んだ神様は三兄弟を気に入り、望む力を一つ与える代わりに、国を築いて人々を導くように言いました。
武芸に長けた長男は「どんな傷もたちどころに治る頑丈さをください。強くて大きく民を守る国にしてみせます」と言い、賢い次男は「人を見抜く力を。民と協力して豊かな国をつくります」と誓いました。
三男は少し悩んだあと、「僕は二人ほど優れていないから、国は導けません。その代わり馬や牛を育てて、二人の力になります」と辞退しました。しかし神様はその正直さを称え、三男には動物と心を通わせる力を授けてくれました。
二人の元にはやがて多くの人が集まり、長男は南に、次男は北にそれぞれ国を興しました。
王様たちは一生懸命に国を治め、弟は二つの国を行き来して兄たちを手助けしました。
しかしやがて神様からもらった力に溺れた長男は、争いを好むようになり、いくつもの国を飲み込んでいきました。
次男も自分より優れた人間はいないと驕りたかぶるようになり、力を使って民を操るように政を行うようになりました。
二人の変化を悲しんだ弟はひっそりと姿を隠しました。
民を大切にしない王に怒ったルカーナ神は大地に大水をもたらしました。城が流れ、街が壊れ、人々は傷つきました。
途方に暮れた王たちを民がひどく責め立てました。
そこへ姿をくらませていた三男が動物たちを引き連れてやってきました。
三男は動物と一緒に、溺れている人を助け、壊れた家を建て直します。
黙々と働く三男の姿に王と民は反省し、一緒になって国を立てなおすために働きました。
二人の王は力に頼りすぎないことを決め、また一生懸命国を治め、民に愛されました。弟も再び国を行き来するようになり、三人は幸せに暮らしました。
建国童話集『三人のはたらきもの』より
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