Sweet Confession : ホワイトデーな一日

るなち

ナズナ/モモ

1.

 僕には血の繋がらない双子の妹が二人いる。

 バレンタインに「一応これでも手作りだから」と目を逸らしながらチョコレートを手渡してくる姉、ナズナ。

 そして「ちゃんと食べてね!」とその上にクッキーをそっと置く妹のモモ。

「ありがとう、味わって食べるね」と二人の頭を撫で自室に戻り、口にしたクッキーが激辛でチョコレートを必死に食べて舌を落ち着かせたのが記憶に鮮明に残っている。一ヶ月で忘れてたまるものか。

 それからちょうど一ヶ月経った今日、僕は二人をリビングに呼び出した。


2.

「ホワイトデーだね」と笑いながらやってくるナズナと何も言わないも表情が楽しみで仕方がないと訴えかけてくるモモ。

 さて、ホワイトデーのプレゼントを渡そう。

「それじゃ、まずナズナから」

 そう言って僕はナズナにバームクーヘンを手渡した。ホワイトチョコレートのかかったバームクーヘンだ。

「ふぅん、面白い物をくれるじゃん」とご満悦そうに受け取るナズナ。

 その横でそわそわとしているモモにもう一つの包みを渡す。

「モモはマカロン。安心して、変な小細工はしてないから」

「わかってるよ」と笑いながらモモは包みを受け取る。

 二人が包みを受け取って満足してるうちに僕はソファーに置いてある二つの包みを差し出した。


3.

「まだあるの?」とびっくりした顔でナズナは言う。

 二人は貰ったお菓子を机の上に乗せると、ラッピングされた包みを受け取った。

「開けてごらん」と僕が言うと二人はそのラッピングを取り出した。

 その中身を見てナズナは頭に疑問符を浮かべ、モモは大はしゃぎで喜んだ。

 さて、なぜ二人の反応にこれだけの差が出たか。中身は色違いなだけで一緒なのだが。


4.

「なんで……テディベアのぬいぐるみ?」

 ナズナは未だ疑問符を浮かべながら僕とテディベアを交互に三回見返した。

 その後数秒経って僕を見ると「でも、シオンならちゃんと意味があるってことでしょ?」と零す。

「まぁね」と返すと「悪い意味では無いんでしょ?」と帰ってくるので「もちろん」と再度返す。

「おにいからくまさん……えへへ。ぬいぐるみは前から欲しかったんだよね」

 ナズナとは正反対に素直に喜ぶモモ。これくらい素直に喜べるようになればいいんだけどな、と笑いながらまた二人の頭を撫でる。

「撫でなくて……」とナズナが言おうとすると「撫でられたいくせに」とモモが笑う。

 姉妹がわいわいがやがやと騒がしくなるので、ここで抜け出そうとリビングを後にしようとするとナズナが手を掴む。

「あと一回だけ」

「わかったよ、あと一回」

 そう言って頭を撫でる。優しく、さすさすと。


5.

 バームクーヘンは幸せが長続きするように。そしてマカロンは大切な存在だと言う意味が込められているらしい。

 僕はあの二人にとって大切な兄でいれるように。そして、この幸せが長く続くと良いなと思っている。

 テディベアに関しては――あまり語らない方が良いだろう。

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