独りの夜に

真砂 郭

ミッドナイト・フォグ

粉砂糖を振ったような霧の夜


降りしきる思い出の冬の雨

白い息を吐いて


十字路の辻

貴女は独りでタバコの煙


待っているの

待っているのは


女の視線の尽きる果て

垣間見えるは

男の背中


路地の向こうで

路地の向こうは

路地の向こうの


辿り着けない

冬の道

追いつけない男の背後で

むせび泣いてる霧笛の調べは


旅の夜


金気を帯びて裏通り

血の味がする匂いをまとう

逃避行

幾夜にも続く

追跡行


逃げ切れた?

それとも追い続けてるの

二人の靴音は

もつれ合い

もつれ愛


ひとしずくの

夢が追う

旅の果て


好きになされば

好きにするさ

身勝手な男の言い分に

愛想尽かしも白々しくて

女のうなじの

白い肌


タバコの香りが呼び覚ます

男の息遣い

何処にいるの

どこに行った


探し出して引き金を引くの

アタシの思い

銃弾に込めて撃ち放つは

アナタが好きよ


陳腐だなんて笑わないで

その真剣さ

血なまぐさい日常に

生きている男は笑う


本気にすれば

本気にしたら

女の唇は


震えて濡れる

雨の夜


忘れちまいな

捨てぜりふのズルい男は

それっきり


姿を見せずに霧の中

アタシの思い出

霧の中


もう見えない背中を追って

女は今夜も夢を追う

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