our last lovers

椿原

プロローグ

政府の戯言

 もし貴方が死ぬのなら、何をして死にますか。

 もし貴方が、この世界を終わらせることができるならば。この世界をやり直せるならば。


______貴方はどうしますか。


 ここはそれが認められた世界。……私は今のところ、巻き込まれたに過ぎないのだが。


 殺人、詐欺、犯罪が飛び交うのが当たり前の世界の中。唯一人々が“普通”を過ごせる港特別地区。私達はそこに住んでいた。そこだけが日常だった。

 そんな普通をぶち壊しに来た二人の異物により、ループ世界に巻き込まれていった。俗に言う非日常ってやつが始まったのだ。

 異物はこの世のものではなかった。ただ、得体の知れない何か、という訳でもない。信じ難いことではあるが、悪魔と天使を自称している。二人は対立していた。巻き込まれた皆は、各々の意思で、その二手に別れ、自身の夢を叶えるべく奮闘する。

片方の陣営が全滅し、自陣営の全員生存がループ解除の条件。そう、彼女達は言った。



 私は断片的な記録をこの書に示す。

 これは颯一に頼み込んで、ループ後に共有することを許された唯一の書物だ。何故か私だけ、前回の記憶を引き継ぐことが出来ないらしい。だから残さなければ。

 他の誰にも渡すことが出来ないが、自身の非日常を憎むことだけならいくらでもできる。

 これを他の誰かが見るということは、きっとループ世界などなくなったのだろう。

忌々しき、世界がどうか、


________終わりますように。





           長瀬百合

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