第6話【人間の17歳はエルフにとって赤ちゃん同然らしい】
日付も変わろうかという深夜。
BGM代わりにネットラジオ『フィーネの純愛』を小音で流しつつ、見慣れた自分の部屋の天井を眺めながら、俺は改めて今日起きた出来事を振り返った。
ナンパから助けたエルフは
清楚でおしとやかなセレンさんはアニメ好きでそして裸族――と情報を整理する。
身長は男子高校生の平均身長でもある俺より少し低く、身体は
切れ長の瞳からは優しさが溢れており、
偶然見てしまった裸体からもわかるように、肌は乳白色でまるで芸術品のよう。
あまりに美しくて完全に脳裏に焼きついてしまい、想像する度に鼻が伸びてしまう。
そんな国宝級の美少女エルフ継母・セレンさんとこれから二人っきりの同居生活が始まる.........なかなか大変そうではあるが、彼女をこちらの世界で一人前に生活できるようにさせることが光一へのせめてもの親孝行だと、俺は思うことにした。
情報を整理し終え、寝る準備に入ろうとベッドから起き上がると、俺の部屋のドアをノックする音が。
部屋を訪ねる人、というかエルフはこの家に一人しかいない。
「セレンさん、どうかしたの?」
ドアを開けるとそこには淡い水色の柄のパジャマを着たセレンさん。
照明の消えた廊下の暗闇に包まれても、セレンさんの美しさに何ら変わりはない。
「いえ、あの......
「ごめん、ひょっとしてうるさかった?」
「そんなことはございません.........ラジオ、お好きなのですか?」
部屋の中のラジオの発信源、スマホに視線を向けてセレンさんは問いかける。
「うん、好きかな。ネットラジオって結構便利で、いつでもどこでも好きなタイミングで聴けちゃうから、こうやって寝る前とかにちょっと聴いたりしてね」
「そうなのですね.........このアニラジは何という番組なのでしょうか?」
笑顔を浮かべるセレンさんは俺の聴いている番組に興味があるように見えた。
ていうか、よく俺が聴いている番組がアニラジだってわかったな。
「『フィーネの純愛』っていう番組で、まだ始まって1ヶ月しか経ってないんだけど、パーソナリティの雰囲気が気に入ってさ。毎週メール送るくらいハマちゃってる」
「.........ちなみにラジオネームは?」
「え......言わなきゃダメ?」
「はい、参考までにお願いします」
セレンさん、ひょっとしてメールを送ってみたいアニラジでもあるのかな?
俺みたいな一点集中型の底辺ハガキ職人のラジオネームなんか参考にしなくてもと思いながらも、真剣な眼差しを向けるセレンさんに負けておずおずと口を開いた。
「......
「――あなた様だったのですね」
セレンさん一瞬驚いた表情ではボソっと何かを言ったようだったが、ラジオのBGMと重なって上手く聴きとれなかった。
「......安直だよね。名付けた自分でももっと他に何かあっただろうって後悔してる」
「そんなことはありません。とても素敵な、響きの良いラジオネームです。きっとパーソナリティの方にも覚えられていると思いますよ」
「だといいんだけどね」
自分以外の誰かにラジオネームを明かしたことが初めてだったので、恥ずかしさで顔が少し熱い。そして何故かセレンさんの瞳が潤んでいる。
これまでの四回の放送中、メールの採用は二回。
戦績としてはいいのかもしれいない。
しかしだからといってパーソナリティに名前を覚えられているかはまた別の話。
好きで送り始めた以上はやっぱり相手に名前を覚えてもらいたいのがファンというもので。
「晴人さん、もし寂しさを感じたりした時は遠慮なくおしゃってくださいね。私は晴人さんの母親になったのですから、いつでも覚悟はできております」
「......はい? 覚悟って?」
言葉の意味がよく理解できずに聞き返すと。
「それはその......母親が赤ちゃんにしてあげることは一つしかないではありませんか」
セレンさんは上目遣いで自分の程よく豊かな胸を両手で下から持ち上げ。
「......私のおっぱい......吸いたくなったらいつでもおっしゃってくださいね」
「――なっ!!!???」
「それでは失礼致します。おやすみなさい」
そう言ってセレンさんは暗闇の廊下の中を消えていった.........。
後日知ったことだが、エルフの世界で17歳はまだ赤ちゃん同然の扱いらしい。
こうして二人の共同生活の初夜は、俺にとって衝撃的な出来事の連続で幕を閉じた。
◇
ここまで読んていただきありがとうございます!
☆や感想コメントなど、いつでもお待ちしておりますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます