愉快な休日

愛空ゆづ

友人A

2022年3月12日 午前10時

 昨夜からつけっぱなしのPCに通知が入る。

『今からそっちの家に行くから迎えに来て……この電車で行く』

 最近ほとんど連絡も取っていなかった友人Aからのメッセージ。そこに一枚の画像が貼られていた。12時着の電車でこちらに来るという。

 私はルームシェアをしており、友人達がツイッターで話していたのは確認していた。2日前からこちらに来る予定だという事は聞いていたが、実際に詳細を聞いたのは当日だった。

『来てもいいけど、飯はこっちで食べるの?』

『あ……なんも考えてなかった』

 特にこちらに来てやることを考えていなかったようだ。私の家の周辺に特段遊べるような施設や沢山のレストランがあるわけでもないため、比較的栄えている駅周辺に行くしかない。


 とりあえず大きな駅に集合して、今流行りの大衆向けイタリアンレストランに行く。デカンタのワインをシェアして昼間から酒を入れ、仕事の愚痴を言い合った。その後はビリヤードにカラオケと一通り遊んで、飯を食って帰った。


 普段のルームシェアでは住人同士で、ほとんど会話はない。

「お疲れ」 

「あぁ、お疲れっす」

 この挨拶だけである。一週間住人と顔を合わせないことすらあるが、友人Aが来ると別である。人の部屋には構わず入ってくる上に鬱陶しい。それが面白いのだが。

 学生の頃から、彼は皆の注目の的であった。いい意味でも悪い意味でも。

 彼が何かアクションを起こすたびに周りは爆笑していた。教師に怒られているだけでも面白かった。彼がいることで周りの空気もよくなっていた。彼ほど笑える人間は今のところ現れていない。

 彼が来たという事もあって、皆で夜遅くまでボードゲームやトランプをして、普段考えられないような交流が生まれた。こういう事ができるのも彼の才能だと思った。

 翌日、ハンバーガーを食べて彼は帰っていった。本当に面白い奴だった。

 こんなに笑ったのはいつ以来だろうか。


 今思い出したが、あいつは飯代もビリヤードとカラオケ代金も払わず帰っていった。少しむかつくが、会った時に最近よく見ているVtuberさんのラバーストラップを貰ったので、許してやろうと思う。


 彼には、いつまでも愉快で居てほしいと切に願っている。

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愉快な休日 愛空ゆづ @Aqua_yudu

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