伝えたい想い

haku

第1話

 「ねえ、聞いてる?来週の花火大会一緒に行こうよー」

 私にそう声をかけるのは親友の空だ。

 「聞いてるよ、それでどこに何時に行けばいいの?」

 私はそう答える。

 「家に6時くらいに迎えに行くから待ってて」

 「分かった」

 そう答えると、次の授業のチャイムが鳴った。

 空は色白で周りよりも、少し背の小さい男子だ。顔も美形なため、いわゆる可愛い系の男子で、無邪気な性格相まってクラスでもみんなからもてはやさせれている。そして何より私はこの空のことが好きなのだ。しかし告白などできるはずもない。私では無理だ。告白して振られて、みんなから何か言われるのは嫌だ。何よりも空に気持ち悪がられるかもしれない。そんなことになるくらいならば現状維持で構わない。横で見ていられるだけで十分だ。いつもそうやって自分に対して心の中で呼び掛けている。それでいいのだと。

 学校が終わり放課後になった。

 「暇だし、ゲーセンでも行くか?」

 「いいね、行く行く!」

 空も弾んだ声でそう答える。私は少しでも空と一緒にいたいのだ。恋人でなくて構わない。だけど一番の友達で一番長く一緒にいたい。これが勇気のない私のせめてもの願いであった。

 「見てみてー、取れた!」

 UFOキャッチャーで熊のぬいぐるみを取って、それを私の前に突き出してそう言う。嬉しそうに私に言うその顔を見ると思わず可愛いと言ってしまいそうになる。

 「良かったな」

 気持ちを隠すためにあえて少し素気なく答える。

 「手加減してよ!強すぎるって」

 一緒に対戦できるゲームをやり始めたがわりとゲームは得意な方なので大体勝ってしまう。強いって言われて悪い気はしない。

 「お前が下手なんだよ」

 「うるさいなー、もう一回だ、次は勝つ」

 「何回やっても同じだよ」

 1時間ほどゲーセンで遊んだ後各々の家へと帰る。家に帰ってからも共通のゲームしたりLINEで雑談をしたりして夜まで過ごす。本当に常に一緒に何かしている。仲はかなりいいのだと思う。

 花火の日になり空が家に迎えにきた。

 「おーい、行くよー」

 私はすぐに支度をして外に出る。

 「それじゃあ行こうか」

 そう言って花火の会場へと向かった。花火の会場は屋台も沢山あって人で賑わっている。はぐれたりしないように気をつけないと。

そんな心配をよそに空はいろいろな屋台に興味深々だ。

 「あれやりたい!」

 「あれ食べたい!」

 そうやって色々なところを周る

 「一口あげるよ」

 空は私にそういう。

 「いいよ、いらない」

 私は断ったが空はしつこく勧めてくるので

 「ありがとう」

 そうして一口もらう。空は満足そうな顔でこちらを眺める。間接キス…そんなこと空が気にしてるわけがないか。そう思いながら食べた。味はあまりよくわからなかった。

 花火が始まる。私たちは少し人の少ないところでそれを見た。暗闇で空の方にに目線をやるとぼーっとを花火を眺めている。

 「綺麗だね」

 「うん」

 そんな短い会話を2人は交わす。静寂の中花火だけが音を出している。今なら告白できるのではないか。そんなことを思って見るが勇気のない私はすぐにそれを躊躇った。

 ドーン!花火が大きな音を立てて打ち上がる。その時ふと空が何かを、呟いた。

 「…きだ」

 私に向かって言っているようだ。空は下を向いたまま、顔を赤くしている。しかし私は花火を見続けている。花火の音でかき消されて聞こえなかった。そんなありきたりな展開ではない。はっきりと聞こえた。「好きだ」という空の言葉が。私はドキッした。予想外なのもあるが自分より可愛いく、そして背も小さい。無邪気で子供のようにも思える。間違いなく自分より弱い、守らなくてはならない、そんな風に思っていた好きな人に先に告白をされた。変な理由をつけて勇気を出せずにいた自分を悔やむ。空の方が私よりも断然強いじゃないか。そして私は空に向かってこう呟いた。さっきの言葉は聞こえなかったフリをして。私は卑怯だな。そんなことを思いながら。でも、それでも伝えたかった。自分からこの想いを…

 「好きだ一生隣にいてくれ」

 花火は僕らを祝福するかのように空に大きな花を咲かせていた。

 

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