第28話 食料探し
俺達はスライムのいる南の湖まで移動する。
「ロキ様……」
「なんだ?」
メルティが俺に話しかけてくる。
「良い天気でとっても良い気分です」
目的地は長閑な平原であり、どことなく冒険者としてクエストに来ているというよりかは、まるでピクニックに来ているかのような感じだった。
「そうだな……その通りだ」
「外の世界というのはこうも広大なものなのですね」
メルティは感激をしているようだ。彼女にとってはこの世界の何もかもが新鮮なのだ。何せ彼女はまだこの世に生まれて間もない、赤子のような存在だからだ。
ぐぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その時だった。メルティが腹の音を立てる。
「も、申し訳ありません……ロキ様。お腹が減りました」
「謝らなくても別にいい……こちらこそすまない、メルティ。ここに来るまでにろくな物を食べさせてやれなくて」
俺達はまだ冒険者を始めたばかりの駆け出しだ。故にお金があまりない。あまり食料も買えなかったのだ。
「……い、いえ。そんな事はないですけど」
しかし、飲まず食わずでは力が出ないのも確かだ。いかにスライムが相手とはいえ。
「とりあえず、どこかで食糧を探すか……俺も腹が減ってきた……」
「ええ。そうしましょう」
こうして俺達は食糧を探す事にした。
◇
「……さて。どうやって食料を見つけようか」
俺は湖の周辺を歩く。
キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
「う、うわっ!」
俺の目の前に、突如、巨大な蜘蛛型のモンスターが姿を現す。
『ビッグスパイダー』だ。
幸いな事にそんなに強いモンスターではない。糸を吐きつけて、身動きを取れなくする攻撃が厄介だが、それくらいだ。
近くにはメルティがいなかった。だが、俺には前に作っておいた装備がある。俺は『ミスリルブレード』をアイテムポーチから取り出し、手早く装備する。前の装備故に攻撃力も性能も大して高くないが、こいつ相手なら問題ない。
「食らえ!」
ザシュッ!
キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
『ビッグスパイダー』を斬る付けると、断末魔を上げて果てた。
「ふう……何とかなったか」
『ビッグスパイダー』は何かアイテムをドロップする。
「これは……」
俺はアイテムを拾った。それは『大蜘蛛の糸』というアイテムだった。
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大蜘蛛の糸。
『ビッグスパイダー』の吐き出す糸である。何かに使えるかも……。
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「そうだ!」
俺は思いついた。近くにある樹木を加工し、この『大蜘蛛の糸』を利用して、ある道具を作る事を……。
その道具を作れば、目の前にある湖から食料を得る事ができると思ったのだ。
俺は『釣り竿』を作ろうと考えた。
こうして『釣り竿』を作った俺は湖での釣りを始める事にしたのだ。
◇
釣りとは基本的に退屈で忍耐力を要するものだ。
「ふぁ……暇だな」
思わず欠伸が出てくる。天気も良いので猶更だった。気持ちよくなって眠気が増してくる。
こんな事してないで寝そべって寝ようか……。
なんて事を考えていた時の事だった。
ピクっ、と釣り竿が動いたのだ。
「い、今のは……」
俺は慌てて釣り竿を引っ張る。
バサッ!
パタパタパタッ!
釣り上げられた大きな魚が陸上で勢いよく踊っている。
「やった! 連れた!」
俺は大きな魚を拾う。
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『大きな魚』
大きいというだけで何の変哲もない普通の魚。焼いて食べても刺身にしても美味しい事この上ない。
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一匹釣れると途端に面白くなってくるものだ。その後、俺は夢中で釣りをする事になる。
◇
「そろそろそれなりの数になったな」
連れた魚の数はそれなりになってきた。大漁だ。
「ロキ様ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「ん?」
遠くからメルティの声が聞こえてきた。
「キノコを沢山採ってきましたよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! はぁ……はぁ……はぁ」
メルティが駆け寄ってくる。
「うっ……」
明らかにカラフルをした毒キノコのようなキノコを大量に持ってきたが……果たして大丈夫だろうか? いや、大丈夫ではないだろう。危険だ。メルティはまだ世の中の事をわかっていない。無知なのだろう。
「よ、よくやったな、メルティ」
「はい。がんばりました!」
メルティは笑顔を浮かべる。相棒であるメルティの健気な努力を否定するのもつらい。この場はとりあえず褒めておく事にするか……。
「おー! ロキ様も大漁ですね! 流石はロキ様です!」
メルティは大量の魚に目を輝かせる。
「そ、そういえばフレイアはどこにいった?」
「ん? そういえば姿が見えませんね」
「お、お待たせしました、ロキ様」
ドスン。
フレイアが戻ってきたようだ。
「こ、これは……」
フレイアは大型の熊を一頭持ち帰ってきた。明らかに獰猛そうな熊だ。
「道を歩いていたらばったりと遭遇してので倒して持ち帰ってきました」
恐らくは熊はフレイアを取って食べるつもりで襲い掛かったのだろうが、あえなく返り討ちにあってしまったようだ。流石は剣聖と呼ばれる少女——フレイアだった。
「あ、ありがとう。フレイア」
「……いえ、お安い御用です」
「それじゃあ、皆で御飯にしますかっ!」
炎の魔剣レーヴァテインの成り代わりであるメルティは炎などいとも簡単に出せるのだ。
こうしてメルティは魚とキノコと、熊肉を炙り始めた。
◇
「はぁ……おいしかったです」
俺達はこうして食事を終えた。キノコは毒キノコっぽかったので俺は食べなかった。しかしメルティは完食していた。体調は問題ないのか……メルティは普通の人間ではないから問題ないのかもしれない。
「よし……それじゃ本題のスライム退治に行くか」
「「はい!」」
俺達はスライム退治に向かおうとした。
――だが、向かうまでもなかったのである。
「すらっ!」「すらっ!「すらーーーっ!」
食事の匂いに釣られてきたのか、幾体かのスライム達が俺達の目の前に現れたのである。
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