第16話 プラチナゴーレムとの闘い
俺はだだ広い空間に来ていた。そこは闘技場のステージのようになっていた。遮蔽物など何もなく、だだ広い空間であった。
そういうステージなのだろう。一体……この場に何があると言うのか。
その時であった。ドスン、ドスン、ドスン。
巨大な足音が聞こえてきた。
突如として、俺の目の前に巨人が姿を現す。巨人は鋭い眼光を光らせ、俺を見下した。
現れたのは人の何倍も大きい、白銀の巨人だった。ゴーレムだ。
それもただのゴーレムではない。ゴーレムはその素材によって、強さが異なってくる。
木を最弱として、次に石、ダイヤモンド、それからプラチナ(白銀)。
目の前に現れたのはゴーレムの中でも最強のゴーレムである、プラチナゴーレムであった。
「くっ!」
思いがけない遭遇(エンカウント)に、俺は動揺を抑えきれないでいた。
「なんだ! こいつは!」
プラチナゴーレムの眼光が不気味に光る。そして、次の瞬間。その巨大な拳が俺に向かって振り下ろされたのだ。
「くっ!」
こんな攻撃まともに受けていては、いくら『アダマンタイトプレート』を装備しているとはいえ、タダで済むわけがない。
けたたましい、爆発音のような音が響いた。
そして、地面には大穴が空いたのだ。いかにあのプラチナゴーレムの攻撃の破壊力が物凄いかを物語っていた。
だが、いかに強力とはいえ、ゴーレムは大雑把なモンスターである事が多い。その攻撃は単純かつ直線的なものであった。
つまりは早々、攻撃が当たる事はないというわけだった。
問題なのは一つだけだった。ゴーレムというモンスターは攻撃力も高いのだが、それともう一つ注意するべき点があり、それは防御力が高い事で知られているのだ。
生半可な攻撃ではゴーレムの硬い装甲を貫く事はできない。その防御力の高さは俺が苦戦した竜(ドラゴン)よりも上であろう。
故に俺の攻撃がプラチナゴーレムの高い防御力を上回っているかどうか……という点が重要であった。
それにゴーレムは高い防御力がある反面、敏捷性という点では大きく劣っている。あの馬鹿でかい図体なのだから、そんな事は当たり前だが。
攻撃を当てるという観点からすれば、至極やりやすい相手でもあった。
俺は『アダマンタイトブレード』を振るう。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
剣が唸りを上げる。竜(ドラゴン)の牙を入手した事により、俺の『アダマンタイトブレード』には炎属性が付与(エンチャント)されていた。剣から紅蓮のような炎が迸るのだ。
剣が走る。
プラチナゴーレムがよろめいた。プラチナゴーレムの硬い装甲が抉れていた。
俺の剣は間違いなく、プラチナゴーレムにダメージを与えていた。
恐らくではあるが、これは『アダマンタイトブレード』の攻撃力が高いからというのもあるが、それと相まって、先ほど手に入れた『竜(ドラゴン)の牙』により、火属性が剣に付与(エンチャント)された事も相まっている。
それにより剣による物理攻撃に加えて、同時に炎属性によるダメージも与えれるようになった。
その相乗効果により、プラチナゴーレムに硬い装甲を打ち破る事が出来たのだ。
いける。
僅かずつではあるが、俺はプラチナゴーレムと渡り合っていける気になってきた。
――しかし。このまま順当に倒せる程、プラチナゴーレムは甘い相手ではなかった。
そんなに簡単に倒せるようでは、奴がゴーレム種でもっとも強いモンスターとは認識されていない事だろう。
俺が相当のダメージを与えた時であった。プラチナゴーレムの眼光が鋭く光る。
大抵の場合。強いモンスターというのは切り札の一つくらいは持っているものだった。そう、このプラチナゴーレムも例外ではなかったのだ。
後、寸前のところで倒せる、という位、プラチナゴーレムが弱ってきた、そう思った。
突如として、プラチナゴーレムの眼光が光ったのだ。
「……なんだ?」
プラチナゴーレムは前と同じように、拳を振り上げ、振り下ろす。その攻撃自体は単純で直線的なものだった。避けるのは造作もない。
だが、その拳が突如、地割れを起こすのであった。地面が大きく割け始める。感覚としては巨大な地震が発生したようなものだ。
「う、うわっ!」
足元が大きくふらつく。
そして、その直後、想像もつかない事が起きた。プラチナゴーレムが高く跳んだのだ。その重そうな体躯に見合わず、高く跳躍した。
そして、頭上から降ってきたのだ。
「なっ!?」
プラチナゴーレムは俺を面攻撃で押しつぶすつもりだ。普通の状態であるならば、それでも避ける事は難しくはなかった事だろう。
だが、直前に放ったあの地割れ攻撃が効いていた。あれが地震のような大揺れを齎した為、足元を取られたのだ。その結果、頭上からのフライングプレス攻撃に対する反応が一瞬遅れる。その一瞬が致命的だったのだ。
「くっ!」
俺は何とか飛びのく。しかし、無傷ではいられなかった。
「……はぁ……はぁ……はぁ。死ぬかと思った」
相当なダメージを負ってしまったのだ。『アダマンタイトプレート』を身に着けていなければ命があったかもわからない。
俺は慌てて、アイテムポーチから『薬草』を取り出し、体力(HP)を回復させる。ついには手に入れた『薬草』×5個が0になってしまったのだ。
このままではまずいな……また新たに回復アイテムを入手しなければならない事だろう。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
プラチナゴーレムが断末魔を上げて、果てる。恐らくはあのフライングプレス攻撃が最後の抵抗だったのだろう。体力(HP)を使い果たしたプラチナゴーレムは倒れ、無に帰した。
難敵であった。できれば、もう二度とやりたくないくらいに。
だが、それ相応の成果があったのだ。プラチナゴーレムは先ほど話したレアな素材アイテムをドロップした。そう、『ヒヒイロカネ』だ。
七色の輝きを放つ、『アダマンタイト』よりも、より輝かしい輝きを放つ虹の鉱石。それが『ヒヒイロカネ』である。
俺は『ヒヒイロカネ』拾った。
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ヒヒイロカネ。
七色の輝きを放つ伝説的な希少金属。伝説級の武器、防具の素材となる。
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俺は『ヒヒイロカネ』をアイテムポーチに入れたのだ。
この『ヒヒイロカネ』を活かすにはもう一つ素材が必要だった。それは魔石だ。上位の悪魔や天使、精霊なんかを倒すと手に入る魂の結晶。魔石。
魔石を手に入れる事で、伝説級の武器、あるいは防具を作り出す事が出来るのだ。
恐らくはこの地下迷宮(ダンジョン)のどこかに、魔石がある事だろう。せっかくここまで来たのだから、俺はその魔石を手に入れ、地上にまで戻りたい、そう思うようになったのだ。
俺の地下迷宮(ダンジョン)攻略は続くのであった。
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