第7話 ミスリルブレードを鍛える
「……はぁ……はぁ……はぁ」
俺は命カラガラ、ウォーウルフの群れから逃げ出していった。『ブロンズダガー』は素手よりもマシだが、もっと強い武器が必要だった。俺には剣士のように剣の腕を磨いて強くなる事はできない。
俺は武器や装備を強くしていく以外にこの地下迷宮(ダンジョン)で生き残っていく術はないのだ。
俺は探し始めた。
「何か……何かないのか……」
武器や防具は当然のように何もないとこから作り出す事はできない。だから俺は武器の素材になりそうなものを探した。
「んっ……この壁は」
俺は一つの壁に辿り着いた。この壁の中から感じるものがあった。鉱石がありそうな気配を感じる。
俺は『ブロンズダガー』で壁の表面を削り取った。壁の中から出てきたのは無数の鉱石だった。しかもこれは『ブロンズダガー』を作り出した銅鉱石ではなく、もっと上質な鉱石。
鉄(アイアン)よりも硬く、それでいて軽いと言われている魔法の金属。
『ミスリル鉱石』だ。
この鉱石があれば、『ブロンズダガー』なんかよりも、もっと強くて良い武器を作る事ができるはずだ。
……絶対にこの地下迷宮(ダンジョン)から生きて生還してみせる。俺は心にそう誓い、武器を鍛えるのであった。
俺は鍛冶師としてのスキルを発動させる。ミスリル鉱石から不純物を取り除き、ミスリル鋼を作り出す。そして、そこから武器を鍛えるのだ。
「……できた」
俺の手には一振りの立派な剣が握られていた。これはミスリルで作られた剣。『ミスリルブレード』だ。
俺は何度かぶんぶんと振ってみる。軽かった。その上に強度は相当なものがある。
試しに何か斬ってみるか。そうだな。
近くにちょうど、手ごろな大岩が落ちていた。これを斬ってみるか。俺は剣を構え、そして勢いよく振り下ろす。
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
!」
大岩が勢いよく斬れた。一刀両断されたのだ。
斬れ味も問題なかった。そして、振った感じの速度も問題なかった。つまるところ物理的な戦闘には二つの重要な要素がある。それは『威力』あるいは斬れ味と『速度』だ。どちらかを優先するあまり、どちらかが欠けてしまってはあまり好ましい結果は出せない。
威力が高い武器でも、速度を失っていては当たらないし。逆もまた然りだ。
この『ミスリルブレード』はその二つを兼ね揃えていた。その点は合格点を与えていいくらいだ。
この剣があればもうあのウォーウルフに怯えて生きなくてもいいかもしれない。いや、それでも群れで襲い掛かられては命はないだろうが。それでももう、一体一ならやれるはずだ。
そしてその機会は間もなくやってくるのであった。
◇
クウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
群れから逸れたウォーウルフの一匹が咆哮を上げた。
俺はウォーウルフと対峙する。当然のように、拵えたばかりの『ミスリルブレード 』を構えて。
「来いよ……ウォーウルフ。俺はもう、逃げも隠れもしない」
ウォーウルフが襲い掛かってくる。それはもう凄い速度で。だが、『ミスリルブレード』は剣でありながらまるでナイフを扱っているかのように軽かったのだ。この軽さだったら速度で負ける気がしなかった。
「はあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
ウォーウルフと交錯する。時間が止まったかのような感覚を覚えた。
――そして。
プシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!
ウォーウルフから鮮血が迸った。
キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
ウォーウルフの悲鳴が響く。
「……やった。この『ミスリルブレード』があれば、きっとやれるはずだ」
俺は段々とこの地下迷宮(ダンジョン)での生活に自信を持てるようになってきた。だが、このSS級の危険なダンジョンを生き抜く上での闘いはどんどん苛烈になっていく。それに比例するように、俺はもっと強い武器や装備を作らなければならなかった。
闘いは続いていく。
======================================
『ミスリルブレード』
ミスリルで出来た剣。剣でありつつもナイフを使っているかと思う程に軽い。
攻撃力+20。
======================================
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます