東京エイリアンバスターズ

こうづき

第1話

「御堂分隊、今日の活動地点はこのへん! 昔は埠頭があったところだね!」

 投稿サイトに上げられた動画の中で、整った顔立ちの青年が大きく手を広げた。肩ほどまである明るい髪を後ろで一つに括り、グレー基調の都市迷彩を施されたジャケットを着ている。芸能人みたいだ、と一瞬思ってしまってから、いや芸能人だよ、と心の中で自分にツッコむ。彼の名前は風岡ソラ。「本業」はアイドルだが、今はもっぱら「副業」のほうで名前を売っている。

 後ろに、同じジャケットを着た仲間ふたりが映る。穏やかな笑みを浮かべた長身の青年と、狙撃銃を肩に担いだ眼鏡の青年。眼鏡のほうは、カメラを向けられると嫌そうに手を顔の前に挙げた。

 彼らの足下に散らばる瓦礫は、かつての《襲撃》で破壊されたコンテナやその積み荷の残骸だろう。その向こうには、東京湾の静かな水面と、青白い《柱》が映っている。

「このへんは見晴らしがいいからいいね、不意打ちの危険は少なそう! ま、敵が来ても、ウチの頼れる分隊長とスナイパーがバシッとやってくれるけどね!」

 分隊長、と呼ばれた長身の青年の名前は、御堂誠四郎。首相も務めた大物政治家の息子で、家族だんらんの風景がよく報道されていたから、ソラよりはよほどテレビ慣れしていそうだ。政治家としては年の離れた姉が父親の跡を継いでいるが、元首相が一番目をかけているのは末っ子の誠四郎だという噂もある。

 スナイパー、と呼ばれた狙撃銃の男は那智一希。小学生のときに新種の昆虫の存在と生態に関するレポートを書き、それが専門誌への掲載にまで至ったことで有名になったが、今はその生物学的興味を昆虫から《あれ》に移している。

 その一希が、無言で銃を構え、画面外に一発。何かが落下する音が聞こえる。

「あー! また撮り逃した! 早すぎだよ、カメラ向くまで待ってよ」

「文句があるなら対処はお前に任せるが」

「冗談です那智先生! すいませんでした! バシバシ撃っちゃってください!」

 そこでカットが切り替わる。似たような景色が続いているため、どれほど移動したのかはよく分からないが、少なくとも状況は大きく変わっていた。

 三人を取り囲む、高さ二メートル半ほどの三脚ロボット――《あれ》、もとい通称トライアイズたち。数は映っているだけでも十体ほど。それを撮影するカメラはドローンに積まれているようで、彼らの様子を少し上空から俯瞰している。

「いやー囲まれたね! すっごい囲まれたね! どこにいたのこれ!」

「いいじゃないか、おかげで一掃できる」

 そりゃそうだけどさー、と答えたソラの右手には日本刀が握られている。誠四郎のそばには、こぶし大の銀色の球体がいくつか、重力を無視した動きで浮いていた。左手を挙げると、球体が分裂し増殖する。

「撃て!」

 誠四郎がサッと手を下ろすと、銀色の球体からそれぞれ複数の方向へビームが発射され、画面が白く染まる。なんとかビームを避けたらしいロボットも、ソラが両手で握った日本刀で斬り捨てた。金属を相手にしているというのに、プラスチックのおもちゃでも斬っているような雰囲気だ。

 動かなくなったロボットの大半が、光に溶けるように消えていく。三体ほどが取り残されたので、ソラがその脚部を念入りに破壊した。

「だいじょうぶ? カメラ無事? ちゃんとオレたちの活躍見てた?」

 やっほー、とソラがカメラに手を振る。


「……って、オレたちはこんな感じのハートフルな日常を送ってるわけなんだけどさ!」

「は、はあ」

 さて問題は、国内でも有名なこの御堂分隊の三人が、自分の目の前にいるということで。

 《基地》に呼び出されたときは何かと思ったが、本当に――これは一体、どういうことだ?

「平瀬佑輔くん」

 タブレットの画面の中と同じ穏やかな笑みを浮かべて、御堂誠四郎がこちらに手を伸ばす。

「私たちの分隊で、一緒に戦ってはくれないだろうか」

「む、無理です……」

 唇に微笑みを乗せたまま、誠四郎が何秒かフリーズした。


 *


「……いや、いいんだ、別に強制ではないからね」

「ちょ、誠四郎、そんな簡単に諦めないでよ!? せっかく見つかったメンバー候補じゃん! 一希もなんか言ってよ!」

「お前の能力が欲しい。とても便利そうなので」

「端的!」

 ここ東京――に限らず、世界中が謎の宇宙兵器・《トライアイズ》との交戦に入ってから、四年ほどの月日が経とうとしている。ある日突然宇宙から降ってきた百六十九本の《柱》から湧き出してきた、空も飛べば陸も走る、三脚六腕のロボット。正体も由来も今もって不明。過去の観測結果から通常空間を飛来してきた可能性は低いと考えられており、宇宙のどの方向から来たのかすら推測できていない。《トライアイズ》は地球人類――あるいはその他の生物――とコンタクトを取ろうとする気配もなく、ただ生物のいる場所を訪れては破壊と殺戮を繰り返す。

 三角柱めいた胴体部の各面にカメラらしきものを持つ形状から《トライアイズ》と通称されることとなったそのロボットは、東京都内だけで十万人ほどの死者を出した。もっともこれについては、「その程度」で済んだ、と捉えられることが多い。なにしろ日本の領土領海内に唯一落ちた《柱》は東京湾のただ中にある。直径一キロ以上ある《柱》があと二十キロ北西に落ちていれば、その落下の衝撃だけで相当な死者が出たことだろう。

「高二なら、オレらと一緒でしょ? どうせ組むならさ、あんま年が離れてる人より、同年代のほうが良くない?」

「いや確かに同年代ですけど、俺なんてただの一般人ですし……!」

「もう一般人じゃないだろう」

 ぼそり、と一希がつぶやく。

「……それは、その」

「お前は、生き残った。《能力》を得た」

 彼の視線から逃れるようにうつむく。確かにそうだ。住んでいた街が予想外の襲撃を受け、最近にしては珍しいほどの死傷者を出した。そしてその中で、自分は至近距離で《トライアイズ》に接触しながら、生き残った。

 そして、《能力》に取り憑かれた。

 動画の中で三人が使っていた武器は、地球人が開発したものではない。《トライアイズ》と同種の物質で構成された、あれらに唯一対抗できる武器だ。実弾でもチェーンソーでも、高性能爆弾ですらほとんど傷がつけられない《トライアイズ》を、あっさりと倒せる力を持つ。

 どういうわけか、《トライアイズ》と接触した人間の中には、ごくまれにそうした《武器》を呼び出す能力に目覚める者がいる。いまだに理屈は分からない。狙ってできるものでもない。老若男女を問わず、ただ一定の割合で、そういう人間が現れる。それを神の加護だと信じる人間もいれば、《トライアイズ》の仕様だと考える人間もいる。しかしどの説にも、決定的な証拠はない。

「で……でも、あなたたちはその中でも特別じゃないですか! 俺みたいなパッとしない人間が入ったら、みんなどう思うか……」

「最初はなにか言われるかもしれないね。でも、最初だけさ」

 誠四郎が優しく微笑む。絶対これは詐欺師の顔だ、と身構える。詐欺師でなかったら宗教家だ。安易に信じてはいけない。

「すぐにみんな、君のすごさに気づくはずだよ」

「それはないです」

「すげえ即答するねキミ!」

「だって、考えるまでもないじゃないですか……」

 ふう、と息を吐き、身体の奥に力を入れる。いつから知っているのか分からない、けれど気づいたときには当たり前にできるようになっていた動作。

 身体の中から何かが抜けていくような感覚と共に、目の前に十インチほどのモニターが出現する。モニターが載っているのは、飛行機のコックピットを思わせる、計器類のついたコンソール。軽く手を広げたくらいの大きさがあるそれは、支えるもののない空中に展開されている。背中側にも、無数のアンテナが生えた浮遊体が浮かび上がる。

 刺々しいアンテナは、まるで他人を近くに寄せ付けないためにあるかのようだ。

「《これ》に攻撃性能はありません。俺が持ってるのは、逃げるためだけの力です。自分だけが逃げて、助かるためだけの……」

「本当にそう思っているのかい?」

「当たり前でしょう!」

 この《武器》はとにかく目立つ。一目で異質な存在だと分かる。《能力者》だと分かってしまう。戦うことを期待される。された。けれど、できなかった。

 瓦礫の街を、ただ逃げることしかできなかった。

 《能力者》であることを隠すこともできなかった。知らん顔で振る舞うには、あまりにも他人にこの姿を見られすぎた。《能力者》ならば戦うことを期待される。当たり前だ。自分だってそう思っていた。戦う力がある人間は、その能力を存分に振るうべきだと。力のない人間を守るべきだと。

 ――自分は守られる側なのだと、信じ込んで。

「いやいやいや、それはちょっと謙遜しすぎだって! 奥ゆかしいってレベルじゃないから! その《能力》、どう考えてもすっげー使えるからね!?」

「そりゃ、あなたたちみたいな人が使えばそうかもしれませんけど……」

「だろ? だったら、やっぱオレたちと組んだほうがいいじゃん」

 え、と首を傾げると、ソラは両手で誠四郎と一希を指す。

「すげーヤツに使ってもらえばいんだよ。オレは馬鹿だから突っ込むしか能がないけど、コイツらならお前の能力、バッチリ生かしてくれるはずだからさ!」

「な……なるほど……?」

 誠四郎とは違う意味で、ソラの言葉も思わず呑みたくなるような甘さに満ちていた。

 ――それはつまり、自分に負わされている責任を、彼に押しつけてもいいということか?

 動かなければならないのに動けない、このどうしようもない現状から、自分を救い出してくれるということか?

「攻撃はコイツらがやるから大丈夫!」

「ソラさんは……?」

「オレ、ビーム出せないからね」

 確かに動画の中でも、ソラの《武器》は日本刀だった。《武器》は能力者がまったく知らないものにはならないと言われており、また見た目と機能が大幅に乖離することもない。自分の《武器》をソラが日本刀であると認識したなら、ビームは出ないだろう。その代わり、一撃で与えられるパワーはビームの比ではないはずだが。

「キミがいたら、オレは楽できると思うんだ! 試しに一回、ちょっと行ってみようぜ!」

「は、はあ……ちょっとだけなら……」

「よし、じゃあ行こう。今すぐ行こう」

「え、今から……?」

「今から!」


 *


 通過した交差点の信号に、光は点っていない。他に走る車も見当たらない街を抜け、車は海へと向かう。セダンタイプの乗用車の中に、男四人のむさ苦しい道中だ。車の外は、気軽なデートが似合いそうな春の陽気に包まれているというのに。

「ほら、あれ知ってる? 昔のテレビ局!」

「あ、はい、小さい頃に家族で来たことがあります。今はこんなにボロボロなんですね……」

「この辺はどこもこんな感じだよー。建物の中とか、下手に入ると危ないから気をつけて。そこの高架も崩れてるトコあるしさ」

 はい、と頷きながら、前方に築かれたバリケードを見る。今まで走ってきたイエローゾーンよりさらに危険度の高い、レッドゾーンの入り口だ。

 小学生の頃には、このあたりはお台場と呼ばれる賑やかな地域だった。今では人影もなく、静まりかえった廃墟が広がっている。割れたアスファルトの隙間からはしぶとい雑草が生え、かつては綺麗に刈り込まれていたのであろう植え込みも、今はどこまでが花壇だったかも分からない、野性味あふれる風体を晒していた。

「あとさ、ホントにタメ口でいいからね! オレのことはソラでいいよ、オレも佑輔って呼んでいい?」

「なんとでも呼んでもらって大丈夫です。あ、でも、いや、俺なんかがそんな、タメ口とか」

「その遠慮どっから来んの? どっかに遠慮の泉とか湧いてんの?」

 車はバリケードの手前で停まった。運転していたのは一希。もちろん普通免許は持っていないはずだが、このイエローゾーンは道路交通法の管轄下ではないため問題にならないと聞いている。

「もしそうなら、ソラは少し彼に遠慮を分けてもらったほうがいいかもしれないね」

「ひっでー! あ、佑輔、降りて降りて。車で来れんの、このへんが限界だから」

 《トライアイズ》は《柱》からやって来て、その道中で《能力者》たちに始末され、徐々に数を減らしていく。この湾岸区域は《柱》に近く、まだ《トライアイズ》がはびこる危険地帯なのだ。これ以上先まで車で侵入すれば、車も無事ではすまない。そもそも道路状況が悪くて進めない場所が多いし、車の中に閉じ込められでもすれば、生身で襲われるよりもよほど危険――なのだそうだ。

 車のそばで、ブーンという振動音がする。そちらを見れば、プロペラが四つついたドローンが二台、青空へと上がっていくところだった。ここから先、佑輔たちの行動を撮影し、記録を取るためのドローンだ。ドローンを起動したのは、助手席に座っていた誠四郎。長身に特殊活動用ジャケットがよく似合っている。ソラといい、自分と同じものを着ているとは思えない。

「御堂分隊、これより活動を開始する」

 ドローンに向けて手短にそう告げると、誠四郎は右手を高く掲げた。次の瞬間、彼の周囲に直径十センチほどの球体が四つ浮かび上がる。有名なマンガのキャラクターによく似た能力。初めて彼の活躍を見たとき、こんな人でもマンガを読むんだな、と思ったのを覚えている。《武器》の形状は、《能力者》が明確にイメージできれば、実在の武器に似ていなくても構わない。

「新メンバーを加えたオレたちの活躍、見ててくれよな!」

 カメラに向かって左手の指を差し、いい笑顔を浮かべるソラ。その右手に、一振りの日本刀が出現する。

「えっと……俺も何か言ったほうがいいんですか?」

「毒されるな。無視でいい」

 そっけなく答えた一希が、両手を前に出す。空気を掴むような仕草と共に、スコープのついた黒い狙撃銃が現れた。

「佑輔、あれ出して出して!」

「あ、はい。ちょっと下がってください」

 一歩下がったソラをさらに押しのけるように、コンソールとアンテナが展開する。コンソールについている計器類にはスイッチやダイヤル、何かの表示計などがついているが、これには意味があるのかどうか自分でも分かっていない。一希が物珍しそうにコンソールをのぞき込んでくる。

 モニターには同心円と、ゆっくり動く赤い光点が映っている。実際に光っているのは久しぶりに見た。画面上方がコンソールの正面。思わず光点のほうを見る。建物の向こうなのか、まだ目視はできない。

「おおー! これ敵? ここに敵いるの? うわすっげー!」

「あ、はい、たぶんいると……」

 楽しそうにはしゃいでいたソラが、ちらりと光点のほうへ視線を向ける。その瞬間、スッと何かが落ちるように、その表情が真剣味を増した。

「どういう仕組みだ……? それに周りの計器も動くのか……おい、次来る時は頭にカメラつけてくれ、解析したい」

「え、あの」

 迫ってくる一希の目が怖い。何かのスイッチが入ってしまった雰囲気がある。正直もう帰りたい。

「誠四郎、これ直接お前が見たほうが早い! 交代! 二時方向に三体!」

「分かった。ええと、縮尺は……このくらいか」

 銀色の球体が右手方向へ飛んでいく。しばらくしてビルの角から現れた《トライアイズ》に、四つの球体が集中射撃を浴びせた。ドン、と爆発音がする。

「よく分かりますね、これだけで」

「《あれ》の速度はさすがに身体が覚えているからね。この辺りにはよく来ているから、地図も頭に入っているし」

「な、なるほど……」

 そう言っている間にも、さらに二機が撃破される。モニターから光点が消えた。近くにはもう、敵はいないらしい。

「縮尺は変えられるか?」

「多少なら……」

 ぐっ、と気合いを入れると、同心円の間隔が狭くなる。新たな光点が画面の隅に現れる。背中側でアンテナがガシャガシャと変形するのが分かる。

「……おい、どうしてコイツ、今まで前線に出てなかったんだ? どう考えても野放しにしていい能力じゃないぞ」

「い、いや……作戦への参加は義務ではないと言われたので、その……」

「あー、分かる分かる。せっかく命が助かったのに、戦って死んだりしたらイヤだもんねー。むしろ今日よく来てくれたね? もしかして今もすげー帰りたいとか思ってる?」

「わりと思ってます」

「あはは、そりゃ申し訳ない!」

 欠片も申し訳ないとは思っていなさそうな顔でソラが笑った。いつの間にかさっきの鋭い雰囲気は消えて、元の陽気な調子に戻っている。

「それに、これ……言われるほどの能力ですか? 敵の所在くらい、普通にレーダーとか使えば……」

「えっと……それマジで言ってる? ならマジメに答えるけど。誠四郎が」

 誠四郎が微笑んだまま二秒ほど固まって、それから何事もなかったかのように口を開いた。

「君の言う通り、地域によってはそれで問題ない。だが基本的に、湾岸地域にはビルや工場が多いんだ。基地のレーダーで様子を見るには、背の高い遮蔽物が多すぎる。ドローンはあまり高く上げると潰されてしまうし」

 三メートルほどの高さに上がったドローンを見上げる。

「この辺りに直接カメラやレーダーを置くのは、色々あってみんな諦めたようだし。そうなればもう、あとは目視に頼るしかないというわけだ。幸い、ある程度の数は上陸する前に潰せているから、ここまでたどり着いている機体はそれほど多くない」

「多くない、って……でも、俺の街には……」

 記憶が蘇る。絶望的な数の《トライアイズ》が街に押し寄せて、すべてを蹂躙していった様子が。学校にも、近所にも、たくさんの死傷者を出した悪夢が。

「ああ、君は《スタンピード》の被害者だったね。上陸できた機体が密かに集まり、一気に攻め寄せる現象――あれはおそらく、彼らなりの生存戦略なのだろう」

 《トライアイズ》は基本的に、撃破されると消滅する。《武器》が無から現れ、無へと戻すことができるのと同じように。ゆえに、上陸する機体の数が《柱》や沿岸部の監視によってある程度分かっていたとしても、湾岸地域での交戦後の残存数を正確にカウントしておくことは難しい。

 逆に、《柱》からではなく無から《トライアイズ》が現れることもありそうに思えるが、今のところそのような現象は確認されていない。とはいえ、「確認されていない」だけで、すでに行われている可能性もゼロではない。

「でもさ、そうやって集まった機体も、佑輔の能力があれば見つけ出せるわけじゃん? そしたらもう倒し放題ってわけよ! すっげー良くね?」

 な! とソラが親指を立てる。

 ――そうすれば、もう、あんなことは起きないのか?

 いや、しかし、それは。

「……あの、今さらなことを聞くんですけど」

 小さく片手を挙げて、尋ねる。

「もしかして俺、『逃げるため』じゃなく、『攻めるため』に呼ばれてます……?」

 えーと、とソラと誠四郎が顔を見合わせて。

「もちろんそのつもりだよ」

「そりゃそーでしょ」

 一足す一は二でしょ、とでも言うような調子で、ふたり揃って頷いた。

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