第102話 それだって!

 だが、その答えに納得するわけもなく、


「だっておかしいでしょ!?私なんかに優しくするのは羽彩だけだもん!」


「お前の友達はどうなんだよ?仲良いし優しくしてもらってるだろ」


「…………いい友達だけどさ、あんたと羽彩は違うんだよ」


「何がだよ、俺には同じに見えるが?」


「……こう、言葉では言えないけどさ、違うんだよ。私には」


 熱のせいか、いつもより辛辣な表情をする千葉。

 俺にはその違いは分からないが、千葉にとっては180度別のモノ。

 優しさの種類は言い表せないほどにある。それを分かろうなんで無理があるかもしれないな。


「あのなー、自分で言うのはマジで死にたくなるくらい恥ずかしいんだけどさ」


 千葉から少し目を逸らし、頬を掻きながら、


「俺、千葉の事が心配なんだよ」


「なんの心配よ」


「色々だよ」


「詳しく言いなさいよ」


「いやクソ恥ずかしいんよ」


「肝心な部分を言ってくれないと、何も分からないんだけど?」


「……………ですよね」


「ほら早く!」


 急かす千葉に、俺はため息を吐くと、


「ほら、お前過去に色々あったじゃん。それでさ、誰かが傍に居なきゃダメなのかなって、それが氷見谷でも、他の人でも。千葉が信頼している人が隣にいたらお前自身も安心かなってさ」


 さらに目を逸らす。

 それを聞いた千葉は、


「……………それだって!」


「はぁ!?」


 いきなり体を起き上がらせ声を荒げる千葉に、俺はぎょっとした目を向ける。


「その怖いくらいの優しさよ!どうしたらそんな発言が出てくるわけ!?」


「え、それでキレてるわけ?」


「当り前じゃない!羽彩でさえこんな恥ずかしいこと言わないって!」


 と、千葉は布団を頭から被る。


「最初言っただろ!恥ずかしいってよ!」


「言ったとしても、もっと言葉を選びなさいよ!」


「選んだ結果がこれなんだが!?」


「もっと考えらどうなの!」


「考えた結果がこれなんだけど?」


「…………ならもうダメね」


「ダメとはなんだ、ダメとは」


 結構言葉選び頑張ったんですけど?しかも恥ずかしいの我慢して言ったんですけど!?

 こんなことなら言わなきゃよかったわ。


「それにさ…………」


 千葉は布団からひょこりと顔を出し、


「その…………勘違いしちゃうから―――――」

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