第95話 私も付いてっていい?

「ねぇ立川」


 氷見谷についていき、俺も体育倉庫に向かおうとすると、千葉に後ろから服を掴まれた。


「なんだよ」


「羽彩とどこ行くつもりよ」


 服を引っ張り、俺の体を倒すと、耳元で囁く。


「どこって、学級委員の仕事だが?」


「なんかやる事あるの?」


「あぁ。リレーで使うゼッケン持って来いって言われた」


「ふーん」


 一度後ろに下がると、


「あんたらが行った後、私も付いてっていい?」


「え、無理だろ」


 即答した。


「なんでよ」


「いや、付いてきても意味ないし、それにお前綱引きあるだろ」


「綱引きってもうあるんだっけ?」


「お前パンフ一緒に作っただろ。そん時に嫌でも目次くらい見ただろ?」


「……………そこまで気にしてなかった」


「少しくらい気にしろよ」


「気にしても何も意味ないじゃない」


「作ってる身なんだから、少しくらい気にかけろよ」


「私はただ手伝ってただけなんですけど~」


「お前から手伝いにきたんだろ」


「………………ういっさい」


 正論を言われた千葉は、そっぽを向く。

 害悪過ぎる。自分から手伝うって言っといてちゃんと仕事しないとか普通に害悪だ。


「んでさ?綱引きはいつなわけ?」


 ため息を吐く千葉に、


「なら言ってやろう、次の次の種目が綱引きだ」


 と、俺が言った刹那、『次の種目は玉入れです。選手は入場してください。その次の種目である綱引きに出場する生徒は招集所へ集まって下さい』


 アナウンスが流れた。


「はい、こっちの事は気にしないで行ってこ~い」


 去り際手を振ると、


「ねぇ、ちょ!それは酷いって!」


「文句は目次作った人に言ってくださいーい」


「ちょ、ま―――はぁ!?」


「まぁ頑張れよー綱引き」


 千葉の奴、どれだけ氷見谷と一緒に居たいんだよ。ちゃんと自分の種目くらい出ようとしろよ。

 俺だって騎馬戦出たんだし。


「早く行くよ、心葉」「そだよ~!3、4組ぶっ潰すぞ~!」


 駄々をこねる千葉は、友達に引きずられながら招集場所へ姿を消す。

 よし、邪魔が消えた。


 さっさと仕事を終わらせて、クーラーの効いた保健室でアクエリでも飲みながらグラるとするか。

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