第96話 止まらなくなるから//

「今、心葉に話掛けられてたでしょ?」


 体育倉庫に向かっている途中に、氷見谷は横から言ってくる。


「あぁ、災難な事に」


「どうせあれでしょ?ついてきたいとか言ってきたんでしょ?」


「よくお分かりで」


「心葉のことだからね」


「もうさ、いっそのこと学校でも仲良くすればいいんじゃないか?」


 そうすれば俺の面倒も減るし、氷見谷も自然に千葉と話せる。WINWINだと思うんだが。

 提案する俺に、


「それはダメよ」


「なんでだ」


「だって、学校でも仲良くしちゃうと―――――」


 と、氷見谷は内股になり唇に手をかけ目をトロンとさせると、


「色々と止まらなくなるから//」


「うんいい判断だ絶対に学校では仲良くするな」


 氷見谷にしては、ちゃんと歯止めを利かせているな。

 良かった良かった。


 みんなに隠してて、クラスでエッチするのであれば、公に仲良くしだしたら授業中などにもバレないようにしそうだな。

 スリルも楽しいとか言って。

 そんな事されたら俺には手が負えない。今でさえダメなのに。


「まぁいいわ。さっさと仕事をしましょう」


「お、おう」


 テクテクと歩く氷見谷についていく。

 体育館の裏にある体育倉庫に着くと、扉を開ける氷見谷。


「相変わらず汚ったないわね」


「そうだな………埃と砂がすごいな」


 手で埃と砂をはらいながら、ケホケホと咳をする俺達。


「さてと、ゼッケンと、あと何を探せばいいんだ」


 蒸し暑い倉庫内に入ると 、お目当てのモノを探し始める。


「バトンね。どちらもカゴの中に入ってると思うけど」


「カゴねー。色は分かるか?」


「詳しくは分からないけど、多分目立つ色だと思うわ」


「了解ー」


 服で口元を隠しながら、棚を物色する。


「確か、前の体育の時間に奥の方にしまってたと思うわ」


 必死に探す俺に、氷見谷は後ろから声を掛ける。


「おいおい。それを早く言ってくれよ」


 報連相大事だぞ?ほぼ毎回足りないんだけどさ。


「ごめんなさい。今思い出した所なの」


「あ、そうですか」


「という事で、このマット退かすの手伝ってくれない?この裏にあるはずだから」


「結局俺は雑用ですか」


「それはいつものことじゃない」


 ため息を吐く俺に、氷見谷はクスッと笑う。

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