第80話 ある意味、そうかもしれない

 ただのからかいにしてはクオリティ高すぎないか?

 あの目は完全に性犯罪を見る目をしてたぞ。


「…………まぁ誤解されてないならよかった」


 再度、俺は安堵のため息を吐く。


「私もからかうとはいえ、あそこまで鋭い視線を向けたのは申し訳なかったわ」


 と、頭を下げる。


「ホントだよ、あれは精神的に来るんだからな」


「みんなによく言われるわよ、目が怖いって」


「怖いというより、悲しくなるんだよなどっちかというと」


「同じようなものよ」


 俯く氷見谷。


 確かに、氷見谷の目は怖い。つり目ですらっとした目元で大人びているからなのか分からないが、怖い。


 クラスで前に立って話してる時の目、あれはみんなを支配しようとしている悪党みたいな目だ。


「…………この話はやめましょう。なんか虚しくなるわ」


「そうだな、やめよう」


「んっん―――――さとて話を変えまして。心葉、喜んでたでしょう」


 咳払いをして、話題を変える。


「俺が来た時は辛そうで喜ぶもなにもなかったぞ」


「やっぱ、結構症状ひどかったのね」


「今は体だるいとは言っててたけど、普通に話せる、てか元気だぞ千葉」


「そう、それはよかった」


 ほっと安堵する氷見谷。


「薬が効いたんだろうな。いいやつ飲んでたっぽいし」


「それもあるけど、私は立川くんのおかげだと思うわよ?」


 と、人差し指を立てる。


「俺?特に変わったことはしてないが」


「机に証拠が出てたわよ?冷えピタ、ポカリ、それにゼリーまで。いたれりつくせりだったみたいね」


「普通に看病してただけなんだが?」


 ごく一般的な看病だと思うんだけど、何も特別なことしてないし。


「私の予想、いえ、心葉がこんなに早く治ったのは立川くんが居たからだと思うわ」


「俺は超能力者かなにかなのか?」


「ある意味、そうかもしれないわ」


「なわけあるか」


 俺は鼻で笑った。

 神かなにかなのか俺は。そんな能力が備わっているなら、今すぐ病院に行ってあらゆる人の治療にあたるぞ。


「でも、一番心葉の治りが早くなったのは………汗を拭いてあげてたのも大きいけど……」


 氷見谷は自分の手を握ると、


「手を繋いで寝かしつけてた、からじゃないのかしら」


 見透かすような目で言った。


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