第71話 エスパーなの?

『どこに何時集合だ?』


 パソコンの電源を切ると、椅子に寄りかかりながら言う。


『来てくれるの?』


『石に頼まれて行かないのは気が引けるからな』


『やっぱ、立川くんは優しいのね』


 クスっと笑う氷見谷に、


『うっせ。早く場所と時間を教えろ』


 俺は少し照れながら急かす。


『そ、そうね。早くいかなきゃ心葉が死んじゃうわ』


『だったら尚更早く教えろよ』


『私は食材とか色々な買ってから行くから、先行っててもらえる?住所送るから』


『え?俺が一人で先に行けって!?』


『今そう言ったけれど』


『マジかよ…………』


 千葉の家………異性の家に一人で訪問。いくら家に千葉しかいないからって緊張するだろ。

 それに…………2人だと変な雰囲気になりかねない。


 前科あるしな。


『立川くんが心配してることは多分今日は起きないわよ』


『は?』


『だって、またエッチな雰囲気になるとか思ってるんでしょ?』


『まぁ、そうだけど』


 なにこいつ。エスパーなの?超能力者かなにかなの?

 それとも変態特有の洞察力?

 どちらにしろ、氷見谷は色んな意味でただ者ではない。


『心葉は今病人よ?そうゆう雰囲気になるわけないじゃない』


『確かにそうだけど』


『心配ないわね。今から住所送るから10時までについておいて』


 氷見谷がそう言うと、ピコンとスマホの通知が鳴る。

 電話をスピーカーにし、画面を開き、氷見谷とのトーク画面を開く。


「ここが千葉の家ねー……………って近っ!」


 俺はスマホの画面を凝視する。

 千葉の家までは、最寄り駅から2駅。そこから徒歩5分程。

 もっと遠いと思ってたから驚いた。


『あら、近かった?』


『ちけーよビックリしたわ』


『ならすぐ行ってあげなさい。心葉、一人じゃ心細いと思うから』


『…………だな』


『少しの間、心葉をよろしくね』


『まかせとけ』


『弱ってる心葉にいたずらしないでよね。まぁするとしたらしっかり動画を撮ってもらうけど』


『いやしねーよ』


『フフっ………知ってるわ』


 氷見谷は含み笑いをすると、『じゃあまた』と言って電話を切った。

 誰がよりによって病人を襲うかアホ。

 そう思いながら、俺は家を出る支度を始めた。

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