第72話 思っていた以上に重症

「ここ……………か」


 あれから急いで支度をし、俺は15分程で千葉の家に到着した。

 白を基調をした外装に、綺麗に整えられた庭。祖母と2人暮らしにしては立派な一軒家だ。


 玄関前に行き、俺はインターホンを押す。

 すると数秒後、


「はい…………どちらさまですか………?」


 少し声が枯れていて、弱々しい千葉の声が聞こえた。


「あ、俺だ、立川。氷見谷に言われて来たんだけど」


「え、あ、うん………………ちょっと待ってて」


 と、言うと通話は切れた。

 ちゃんと風邪を引いた様だな、千葉の奴。全然声に元気がない。

 それは氷見谷が心配するわけだ。

 しばらくすると、玄関の扉が開き、


「いらっしゃい…………って立川!?なんでここにいるの!?」


 トロンとした目が一気に見開き、俺をまじまじと見る千葉。


「いや、さっきインターホン越しに言ったけど」


「違うわよ!なんでここにいるわけ!?」


 はだけていたパジャマを整え、ぼさぼさだった髪を直しながら言う。


「あれ?氷見谷から聞いてない?あいつ色々買ってくるから俺が先に来るって」


「ケホっ―――ケホっ――聞いてないわよ………そんな事」


「あいつ……………」


 こうゆう事は伝えておけよ。報連相が足りないんだよあいつ。


「んで、体調は大丈夫なのか?」


「だい……じょう………ぶ……………」


 先程まで平気そうだった千葉だったが、いきなり足元をフラつかせると、後ろに倒れる。


「ちょ、お前っ」


 咄嗟に、俺は千葉の体を支える。


「ホントに大丈夫なのか?顔真っ赤だぞ」


「だいじょうぶだって………いってる……じゃない」


「どこがだよ。ちょっといいか?」


 と、俺は千葉の額に手を置く。


「あっつ!」


 真っ赤に火照る千葉は、相当な熱を持っていた。

 額だけでなく、体も熱いし。

 これは思っていた以上に重症のようだ。


「立てるか?」


 俺の腕に体を預けている千葉にそう聞くが、


「ごめん、立てない」


 ハァハァと息を切らし、辛そうに答える。


「なら俺が部屋まで運ぶからとりま部屋教えてくれ」


「…………分かった」


 千葉を壁に寄りかからせ、俺は家に上がる。


「おじゃましまーす…………っと。千葉、部屋はどこにある」


 千葉を抱きかかえると、部屋の方向を聞く。


「2階の角部屋…………ケホっ…………私の名前が書いある………プレートがあるから…………分かるはず」


「分かった」


 少し廊下を進み、階段を上がり、2階へと移動する。

 軽いな、千葉のやつ。こう改めて感じる千葉の体。


 身長が小さめなのは知っているが、こう、抱っこして改めて実感する千葉の小ささ。


 こんな体で色々と頑張ってたんだな。千葉は。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る