第69話 デジャブ

 てっきりバッグからコンドームか大人のオモチャでも出るかと思ってた。


「あなた、私から何を渡されると思ってたの?」


 氷見谷は細い目をして聞いてくる。


「気にしないでくれ。別になんも思ってないから」


「もしかして、コンドームとか電マでも渡されるとでも思ったのかしら」


「…………よくお分かりで」


「そんな訳ないでしょ?確かにバッグの中には入っているけど、これは心葉に使うものだから」


「あ、そっすか……………」


 なんで学校のバッグの中にコンドームと電マが入ってるんだよ。

 コンドームは、財布の中に入っていたりするのは高校生なら普通かもしれないが、電マって。

 AVの撮影でもするのかよ。


「心葉へのお礼は、後で私の家でするって事でいい?」


 横にいる千葉に聞くと、


「うん。それでよろしく」


 と、伸びをしながら言った。


「なら、今日は解散でいいか?」


 これ以上こいつと居ると、また教室で始まるかもしれない。

 一刻も早くこの場から離れたい。


「えぇ、帰っていいわよ。今日は本当にありがとう」


「お疲れ、立川」


「お、おう」


 特に止められることもなく、俺はあっさりと教室の外に出られた。

 なんか以外だ。帰り際に止められると思ったが、予想は外れた。

 まぁ無事に帰れることを喜ぼう。

 と、俺は鼻歌を歌いながら、廊下を歩こうとすると、


「ふっ…く…んっ! はぁ…ん…っ!」


 教室内から声が聞こえてきた。

 ……………やっぱ早く教室を出ておいて正解だった。一歩遅かったら目の前で始まってただろう。


「ふっ…………んっ//…っ!」


 徐々に激しさを増す甘い声。


「…………………。」


 俺は人間の本能でドアを少し開けて隙間から中を覗いていた。

 しょうがないだろ。俺だって男だ。エロいものには目がない。

 それに、あいつらの性格はどうかと思うが外見は五つ星。眺めるだけなら目の保養だ。


 にしてもこの光景、デジャブだな。


「――誰かっ//きちゃうっって……………ひゃう//」


「大丈夫よ。立川くんも帰ったし誰もいないわ」


 いや、まだいるんですけどね?ドアの隙間からガン見してるんですけどね?


「でもっ//かえってからでもできるで――あんっ//」


「ここで一回シてから家でじっくりすればいいじゃない。私だってこんなに濡れてるんだから」


 千葉の手を自分の股へと誘い触らせると、氷見谷も「んっ」と声を漏らす。

 このままずっと2人の百合を見ててもいいのだが、流石に俺の良心が痛むので、


「いいものを見た」


 そう呟くと、息子がギンギンのままそっと廊下を歩き進めるのだった。

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