第50話 ホテルの一室
「なんで私達ホテルにいるわけ?」
「あ,いや……………氷見谷のせいだろ」
プールから約1週間後、学校終わりの放課後、俺と千葉はホテルの一室にあった。
事の発端は氷見谷の一言から始まった。
「2人はもっと仲良くしなさいよ!」
いつも通りお昼ご飯を食べている時に、些細な事で口論をしていた俺達に氷見谷はそう言ってきた。
仲良くなんて到底無理だ。「こんなツンデレ野郎と仲良くなんて出来ない」「こんな頭でっかちと仲良くなんてできないわ」睨み合う俺達に、
「なら、2人を密室に閉じ込めて仲を深めてもらいたいと思うわ」
ということで、密室という名のホテルの一室に閉じ込められてしまった。
部屋からは出られない。氷見谷が隣の部屋でこちらの内部を隠しカメラで見ているからな。
いくら部屋の中を探してもカメラは見つからないから下手に動けない。
「んで、どうするんだ?」
俺はベッドに飛び込み寝そべると、真逆で壁に寄りかかっている千葉に言った。
「私に分かるわけないでしょ?アホなの?」
千葉はいつもより不機嫌なようだ。いかにも不機嫌と顔に書いてある。
「でも何か知らしなきゃ出してくれないんじゃないのか?」
「何かってなに?」
「俺に聞くなよ」
分かるわけないだろ?氷見谷じゃあるまいしよ。
「お菓子とかジュースとかあるから雑談でもしろってことなのかな」
テーブルに置いてあるコンビニの袋をまさぐると、千葉は言った。
「かもな、俺なんか食べたい、なにある?」
「がっつかないでよ。えっとー、ポテチにグミに飴に、すごっ、韓国のお菓子まで入ってるわ」
「準備いいな、あいつ」
「飲み物は?」
「コーラがいい」
手を伸ばして物を取ろうとすると、袋の中身を見たまま千葉は停止した。
「おいい、どうした?」
「…………………。」
呼びかけるが、返事はない。
まさか地上で溺れてるってことはないよな?魚じゃないしよ。
「おーい、千葉さん?」
もう一度呼びかけると、千葉は戦慄した表情でこちらを向き、
「…………これ………」
手に持っているものを俺に見せてきた。
「なに、ガムの箱?」
千葉の手は震えていため、よく見えない。
「おい、ちゃんと見せろ」
手首を掴み、震えを止め箱の正体を確認する。そこには……………
【サガミオリジナル 0.01 コンドーム】
「これゴムじゃんかよ!」
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