第44話 大丈夫……だよな
「もう、恥ずかしがり屋なんだから、心葉は」
「あれはどう考えても本能で逃げただけだろ」
「そうかしら?ただ競技用のピチピチの水着を着るのが恥ずかしいだけじゃない?」
「いや、ビキニの方が恥ずかしだろ」
「そうでもないのよ?ピチピチだと体のラインがハッキリ出るから逆に嫌って人もいるし」
「へー、そうゆうもんか」
「全く、あなたは勉強不足ね。女の子のこと」
呆れ顔をする氷見谷に、
「女心が分からなくてすみませんね」
自分でも分かっている為、開き直るしかなかった。
しょうがないだろ?男なんだから女の事が分かる訳がない。
まぁ、そのおかげで初めて出来た彼女にこっぴどく振られたんだが。あれは中三の夏だっただろうか………………あの頃の俺は未熟だったな、色々と。
「でも本当に残念だわ。競技用の水着を着てくれなくて」
「別にあのビキニでいいだろ、十分かわ…………いや、なんでもない」
「今、立川くん可愛いって言いかけたでしょ」
不快な笑みを浮かべながら、氷見谷は俺の顔を覗く。
これまで、あまり口にはしてこなかったが、千葉は可愛い。
氷見谷もそうだが、千葉も男子が口を揃って可愛いと言うほどに。
正直、水着を見た時氷見谷には胸にだけしか注目していなかったが、千葉は全体的、特に表情に目がいってしまった。
俺の意見だし、比べる事はあまりしたくないが、氷見谷よりも可愛いと思う。
単純に俺の好みが感情が豊かな人が好きだからか知らないが。
「………………。」
言葉に詰まる俺に、
「いくら心葉が可愛いからってあげないわよ?」
「いや、そもそも貰わないから、てかそんな感情抱いてないし」
「知ってるわよ。でももしもの話」
「俺は、お前らの関係を知ってる。千葉の過去も知ってる。だからこそ、2人を応援してやりたいんだよ」
「ありがとうね。まぁ、心葉があなたに惚れたなら話は別よ」
「別の話?」
「その時は、私があなた達の事を応援するってことよ」
氷見谷は一歩前に出ると、
「ま、そんな事一生来ないだろうけど」
ドヤ顔をした。
「そもそも、俺があいつに惚れることはないから安心しろ」
「分からないじゃない?心葉はあんなにも可愛いから」
と、目の前を指差す。
そこには、プールの縁に座り、水に足をパタパタと動かす千葉の姿があった。
やはり可愛い。それは認める。だが、
「その時が来たら、世界が終わると思っといた方が良さそうだな」
フッ、と、小さく笑い俺も氷見谷のあとに続いてプールサイドへ足を進める。
「大丈夫……………だよな」
一度自分に問いかける。だが、あの氷見谷愛好家が目移りするわけもなく、俺は頭を冷やす為にも、プールに飛び込んだ。
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