第21話 酷い女でしょ?

「「ご馳走様でしたぁ~」」


「お粗末さまでした」


完食した俺達は、椅子の背もたれに寄りかかりながら声を合わせた。


「いやー、マジでおいしかったわ」


「よかったわ、お口にあったなら」


「いつもの事だけど、最高だったわ」


「心葉もありがとね」


そう言いながら、氷見谷は立ち上がろうとすると、


「あ、お皿は私が片付けるから2人は座ってて」


ハッとしは千葉は、せっせとテーブルに広がっているお皿をまとめると、キッチンへと小走りで向かった。


「あ、俺もやるよ。食べさせてもらったし」


流石に、このまま何もしないのは気が引けている。

皿洗いくらいでも手伝おうと、席を立ち上がりキッチンへ行こうとすると、


「あんたは座ってなさい!女の子と席に一人にするとか最低極まりないからね!?」


顔を覗かせてきた千葉に、洗い途中の包丁を向けられて怒鳴られてしまった。


「危ないだろ!洗剤ついてんだから手を滑らせて包丁飛んできたらどうすんだよ!」


「そんな事あるわけないじゃない」


「ありえそうだから言ってんだろうか!」


そうゆう家庭事故を耳にしたことないのか?そもそも人に包丁を向ける時点で危ないし。


「こっちはいいから、あんたは席に戻ってて!早いく早く!」


「だからあっぶないだろ!」


包丁を上下に振り回しながら、俺を席へと追いやる千葉。

せっかくの良心を否定された俺は、ため息混じりに席に戻った。


「可愛い女の子に拒否られて残念だったわね」


クスクスと笑いながらこちらを見てくる氷見谷。


「せっかく手伝ってやろうと思ったのによ、あのツンデレ貧乳が」


キッチンの方を睨みながら言うと、


「誰がツンデレ貧乳ですって!?」


千葉は包丁を拭きながら顔を出した。


「そんな事言ってないから、お皿洗いに戻って頂戴?自分から率先していあるって言ったんだから」


「クッ――――――後で覚えてなさいよ」


氷見谷に逆らえない千葉は、ぐぬぬと歯ぎしりをしながらキッチンへと顔をひっこめた。


「多分、私を一人にさせたくなかったんでしょうね」


「だろうな、お前にベタ惚れにみたいだし」


「溺愛されてて困ってるわ」


「自分が依存させるように仕向けておいて?」


「酷い女でしょ?」


「自分で自分の非になるような事を言うな」


俺の机をあれだけびしょびしょにするだけのテクニックを持ってるんだ。千葉も嫌でも氷見谷にゾッコンになりそうだ。


「そうえば立川くん――――――」


「ん?どうした?」


そう聞き返すと、氷見谷は突然不快な笑みを浮かべ、


「デザート食べたくない?」


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