上司が見えないライン

バブみ道日丿宮組

お題:うるさい人 制限時間:15分

上司が見えないライン

 耳障りな波紋の音は永遠となって響く。

 あれをやれ、これをやれ、あっちもこっちも、どこもかしこもだ。

 たった1人の人間の処理能力を遥かに超える仕事を押し付けられ、どれか1つでも遅れれば怒られ、失敗すれば怒られる。

 それが当たり前の日常。

 うるさい上司と、同期たち新人たちは可哀想な人をみるようにボクを見てくる。

 そう……上司はボクにしかパワハラまがいなことをしてこない。ポジションがポジションでもあるけれど、他のチームには何もしない。

 明らかな嫌がらせと、社内でも有名。

「……わかりました」

 だけど、こうすることで新人たちの心は傷つかないし、何が正しいのかを理解してく。

 ボクの仕事の一部は彼らの仕事であるから、怒られるのはボクでいい。ボクは彼らをフォローして鍛えてく。あの上司はいずれいなくなる。社内で有名になりすぎたせいか、他のチームが団結して隠れて行動を全てとある業者に密告してるらしい。

 で、もうすぐ資料ができあがり、それが社長宛に送られるという寸分らしい。社長は滅多に会社にはこず仕事相手のご機嫌をとる間。社内を見てる余裕なんてなくあの上司が『そういう皮肉めいた社長の変わりという意味』で動いてるという状況だ。

「声はでかくしないと意見が通らないからしっかりしろよ」

「そうですか」

 あいにく、ボクの父はもっと口うるさい人だったのでこれくらいじゃへこたれない。

「ふん、まぁいい。今日中だからな」

 どすんどすんとまさに象が歩く重量感を醸し出しながら上司が去ると、チーム内チャットが反応する。

『今日の仕事はなんですか』

『分担で終わらせましょう』

『少しはダイエットしないのかな』

『むしろ増えてるでしょ、態度も重量も』

 パソコンから顔をあげると、周りにいるチームたちはにっこり笑う。

 ありがたいことだ。

 だからこそ、指示は的確に送る。

 得意分野ごとにこなせば終わらない量じゃない。定時上がりは難しいけれど、たった1時間程度で終わる物量だ。

『じゃぁーー』

 分担作業をチームで共有し、任せる。

 もう慣れた作業だ。

 ボクは1人じゃない。たった1人で耐えて見せてるだけで、やることはチーム。上司は内容と結果しかわからない。

『誰が作って一体これがなんなのかわからないただのうるさいだけのスイカ』

 そんなことをボクの一番補佐をしてくれる人がいつもいう。

 口元を一瞬緩ませて、ボクも作業を開始した。

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上司が見えないライン バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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