転移してきた少女

バブみ道日丿宮組

お題:ワイルドな朝 制限時間:15分

転移してきた少女

 朝目覚めると違和感があった。ふとんがない。

「……?」

 よくみるとうっすらと肌寒い。どうやら服までないのかと、体を起こそうしてみると普段感じることのない重さをお腹の上に感じた。

 薄ら目で見てみるとそれは人間の形をしてた。

「おはよう、お兄ちゃん」

「……? おはよう」

 妹なんていたかなと自分の着てたダブダブの服を少女は羽織ってる。

「で、不審者?」

「違うよ、妹だよ。忘れちゃったの?」

 忘れるも何もこの家には1人しかいない。事故死した両親は数年前。兄弟もいないし、甥っ子の顔すらも覚えてない。

「いない。第一妹ならなんで俺の服をきて腹の上に座ってるんだ」

 体を半分起こし、少女を体の上からどかすと幸いなことに下着だけは残ってた。危なく通報してたらこちらが逆に逮捕されてたところだったなと安心するのもつかの間、

「やっと一緒にいられる時間ができたんだからずっと一緒にいようね」

 腕を抱きしめてきた。

「あいにく目を覚ましたばかりだから、これが現実か夢なのかはわからない」

 でも、腕に感じる確かな膨らみと暖かさは人間のものだ。幽霊であるならばこうはならないはず……妖怪でも見た目ではなさそう。

「あと数週間もすれば婚約だからね、はやく思い出してね」

「はぁ?」

 驚きの声をあげたときには少女は腕から離れて、

「朝ごはん作ってくるから着替えておいてね。わたしの服は夕方くるからそれまでこの服借りておくよ、お兄ちゃん。あ、旦那様♡」

 にっこりとそういって少女は階段を降りて、おそらくいってた通り台所にでも向かったのだろう。

「……」

 思考が追いつかない。

 わかったのは、ふとんは足元に転がってること。少女が鍵がかかってはずの家に入れたこと。そしてわからないことはたくさんだ。

 ひとまず確認と、

 スマホにある着信履歴は変わっておらず、メール内容、日時は間違いなく狂ってない。ためしにSNSで知り合いにメッセージをおくると普通に返ってきた。

 つまりは、ここが現実。

 あの妹なのか、婚約者なのかわからない少女は本物となる。

「……はは」

 冗談にしてはきつい話だ。

 何をどう間違えたら、こんなたちの悪い形の朝を迎えなきゃいけないんだ。

「はぁ……」

 聞こえてくるやかんの音を聞きながら、俺は服を着替え台所へと向かった。

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転移してきた少女 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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