人と違うものの構造体
バブみ道日丿宮組
お題:あいつと口 制限時間:15分
人と違うものの構造体
血の中とかは随分と環境がいいものなんだな。たまに圧死しそうになるがいいものだ。こうして生きてるというだけで、あいつの口車にのったのもいいと思えてくる。
「ただ、まさか細胞と会話できるとは思わなかったな」
「そりゃ生き物ですから、小さいご主人様のお友達と同族となったのですから喋れますよ」
あっというと赤血球は俺の手を引っ張った。
「そろそろ流れますのでご注意です」
「なかなかこれだけはなれないものだな」
循環されるのが血の運命。同じ場所にはいられない。定期的に場所が変わってくのは景色が変わる観光地にいる気分だった。
まぁ……現実で俺がしたことはこの血を浴びることだったんだが。
「しかし、食われても死なないってのはどういうことなんだ」
「ご主人様は人間ではないですから、他の方にも会いましたでしょ?」
確かに血の移動をするとたまに俺以外の人に出会う。同じように犯罪をしたもの、居場所をなくしたもの、理由は多くは語らないが同じようなのがあいつに食われたということだ。
「隠れ蓑としては最適だし、ほとんど1人でいるようなもんだしな。欲求もわかないし、生きてるのか死んでるのかよくわからない」
おまけに悪い気分もしない。殺人欲求があんなにもあったのにここにいるとどうしてか全てを忘れられる気がする。
「実際の世界ではあなたは殺されたことになって、ご主人様は多額の利益を得てますからそのお礼も兼ねてるのでしょう」
「なるほどな」
人間じゃないからこそ普通の生き方ができないってか。そういやどんな風に俺は食われたんだっけな。痛みももう忘れたな。
ただ大きな口に吸い込まれた時、この世の全てから許された気がした。殺したやつへの罪滅ぼしは一生できないだろうがこれでもう誰かを殺さなくていいと思うとあの時笑った気がした。
「今度あの場所へ戻るのは何年後になるんだ」
「どうでしょう。気まぐれですから、1000年かかるかもしれません」
赤血球には顔はないが、最近表情がわかるようになってきた。愛想笑い。彼もまた旅人なのだ。
「そうか、この景色も悪くはなかったんだがな」
どうして血の中に地上の風景が見えるのかはわからないが、世界を旅してる感覚も悪くない。
「お、きましたね。うまく血流にノリましょう」
「おう」
そして俺たちは、新しい血へとなる。
人と違うものの構造体 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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