選択肢

バブみ道日丿宮組

お題:臆病なロボット 制限時間:15分

選択肢

 お前はまるでロボットのようだ。

 だから、最後に1つだけ選択肢をあげよう。

 そう手紙の最後には残されてた。

 まさかその手紙が遺書だとわかるまでに4年の月日がかかるとは、この時はまだ思わってなかった。


「遺産相続はなさるんですか?」

「はい、そう書かれてますのでそうします」

 私はロボット。

 親の言うとおりにしか動けない臆病者。それ以外に行動原理がない。

「血族の方が異論を申し立てておりますがいかがなさいますか?」

「知らない人は知らない人です。父と母の手紙どおりにしてください」

 私が親のロボットだったからこそか、親の死体と4年間も暮らしてることに気づかなかった。元々私の生活には私語というのはなく、親とのコミュニケーションは手紙と、電子通知。しかもスケジュールできちんと毎日の行動が決められてる。食事も決まった時間にテーブルの上に置かれてる場合と、作られたメモ通りに冷蔵庫のものを調理するだけだった。

 ただその通りに私は幼稚園から小学生の低学年まで行ってた。一変もおかしさを感じずただ親のロボットであり続けた。これが私の役目なんだとそう思いこんで。

 家の付近で異臭がするとか、親が仕事にこないとかで急に周りが慌てだしたので、何が一体おかしいのだろうかと思い、人をいざ家にあげてみたら、親が死んでる事実をここで知らされた。

 動かないだけで死んでるんだとはわからなかった。

 ましてや、それが親と本当に呼べる存在なのかわからなかった。見たこともない人か、もの。それぐらいの認識しか私はその親という対象に持ってたなかった。

 というか、はじめて見たのが死体だった。

『仮面家族』

 お互いをお互いが認識していない家族のことをそういう風に呼ぶことがあるらしい。外では家族のふりをして家では全く別のことをする。

 なるほどなと、中学校に上がってみて広くなった家の中で実感できる。

 何も変わらない日々が続いてしまうと、親なんていてもいなくても何も変わらないんだって口元が歪みそうだった。でも、表情の変え方はわからなかった。

 笑うということはスケジュールにはない。

「わかりました。そうします」

 親に何か会った時の弁護士にあったのは小学校の3年生になった時。

 弁護士はやけに私が子どもらしくない言動、思考、行動をするのが気になってたようだが、本人の石を尊重する、遺言を遂行すると遺産と家の所有者は私になった。


「……」

 スケジュールは高校、大学、社会進路までぎっしりと書かれてる。この通りやればまず間違いなく大丈夫だろう。

 けれど、選択肢が1つ。

 ロボットとして死ぬか、生きるかを選べというタスクが毎日スマホにポップアップしてくる。

 これを選ぶのはロボットの私にできない。

 臆病者には選べない

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選択肢 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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