弱さのために

バブみ道日丿宮組

お題:去年の14歳 制限時間:15分

弱さのために

 人生の境目ーーそれはターニングポイントととも呼ばれる。

 家族を失った日がちょうど14歳になった去年のこの日。

 本来祝われるべき日の誕生日は、全く別の日になった。

「……」

 弟と私、二人だけの生活になって1年。いろいろなことがあった。家事とか、学校のスケジュールとか、親の代わりは難しいもので反抗期の弟は何を考えてるかわからない。

 あの日からずっと家に閉じこもったままで、何を考えてるのかわからない。

 ご飯を食べたりトイレに行ったりはしてくれるけど、私とはすれ違っても挨拶も目を合わしてくれない。まるでここに自分がいないみたいで凄く怖い。

 おじさん、おばさんが話しかけても変わらない。明るい場所に連れてくこともできない。

 私にはどうすることもできない。

 家に帰ってお母さんの代わりをして、夜は親戚のおじさんの仕事のお手伝いでお金を稼いでお父さんの代わりをしてる。

 これが本当にいいことなのかはわからない。

 弟を元に戻せる方法は時間しかないって、先生は言ってた。

 それは私にも言えることって。

「……うん、大丈夫だから」

 電話の相手はおばさん。おじさんとの仕事内容が気になるのかやたらと電話をかけてくれる。そんなことしなくてもお金は援助くらいできるともいってくれる。

 どっちが正しいのか、どうなんだろう?

 弟の部屋の前にきて、去年からはじまったことを独り言してみる。もちろん、弟が私の言葉を聞いてくれてるのかは知らない。

 元々塞ぎ込んでるのだから、これはただの愚痴。そう……愚痴。

 言葉を作っても、作っても心は晴れてこない。

 あの日失ったものは家族以外にもたくさんあった。


「……お姉ちゃん、もういいんだよ」

 揺さぶられてるんだと思ったら、うたた寝をしてたみたい。

 顔をあげると弟が私を見てた。

「あれ……話せるようになったの?」

「お姉ちゃんがずっと何してるかわかってた。わかってたけど、わからないふりをしてた。僕が弱いからお姉ちゃんにずっとずっと無理をさせてて……」

 弟の目はもう雫でいっぱいだった。

「終わりにしよう……おじさんとの仕事もいいよ……お姉ちゃんが傷つくことはない。僕が弱いから。僕が強くなって守るから」

 抱きしめてきた弟はなんだかお父さんの匂いがした気がした。


 その日、私は去年と同じように姉弟仲良く同じ布団で眠った。

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弱さのために バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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