兄が見えたもの
バブみ道日丿宮組
お題:光の幻覚 制限時間:15分
兄が見えたもの
幻覚というのは幻を感じ取ること。
それは光のメッセージ。
いわゆるそんな怪奇的現状で、兄は病院から飛び降りた。
致命傷にはならなかったけれど、
「……」
今もなお眠り続ける。
私はあの時の様子を覚えてるし、警察にも病院にもお母さんたちにも何度も聞かれる。
おかしなところはなかったか、お前が突き落としたんじゃないのか、お前が何か言ったんじゃないのか。
うん、噂ってのは凄いものでーーまるで幻聴が事実の暴言となって学校に広まってた。いつの間にかというかあっという間だった。
休んでる間に今までの居場所はもうなかった。知らないところにいる嫌な気分しかなかった。
そんな場所に私の場所はない。
だから今はほとんど兄の病室で兄が見た光を探してる。
「お兄ちゃんは嘘つかない人だもの」
私が見つけてその正体を幻覚じゃないっていえば、きっと私の日常も兄の日常も返ってくる。
「……うん、大丈夫」
身体がちくりっと傷んだ。
その場所は兄の恋人だった人には呼び出されて、鞭を打たれたところ。
何度もやられたから身体の至るところに痣が残ってる。
たぶん、これからも兄が目覚めるまでは増えてく。あの人の目は学校の人と違ってどこか異常だった。兄がおかしくなり始めたのもたしか……あの人と出会ってからだったような気がする。
でも、確かめようがない。
あの人に会えば私は虐待にあう。それを誰かにいうこともできない。
『どうせお前が誘惑や、幻覚でも見たんだろ』
そう言われてしまうのが現実だろう。
「……お兄ちゃん、私どうしたらいいの?」
機械の規則正しい音が耳に返ってくる。兄の声は返ってこない。
わかってること。
その音を聞きながら私は目を閉じ、あの日のことを思い出す。
********************************
「病院に現れる光って知ってるかい? 見たことは?」
「それって黒い死神とかじゃないの? 私はあまり病院にいたことないからわからないよ」
「うーん、たしかに都市伝説にそういうのがあるってことは聞いたことあるね」
でもさでもさと兄は嬉しそうに話す。
兄が入院してたのはデート中に恋人を守ろうとして車にはねられたからだって本人が言ってたし、はねたドライバーから慰謝料をもらってるから本当のこと。たぶん。
「最近僕もそれをみるようになったんだよ」
お前にも見えるか? とおかしなことを兄はその日から毎日繰り返すようになって、そしてその夜。
兄は私を見送る時、
「今日光が僕に会いにくるんだ。そしたら紹介するよ」
キレイな顔をして兄は送り出してくれた。
その結果がこれだ。
*********************************
兄が目覚めてくれれば何かがわかるかもしれない。
それより前に私が見つければもっとはやく終わるかもしれない。
何がほんとで、何が嘘なのか、私は知らなくちゃいけない気がするから……。
兄が見えたもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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