愛から生まれたもう一つの命
バブみ道日丿宮組
お題:愛の恋人 制限時間:15分
愛から生まれたもう一つの命
繋がりがあればまた再会できると信じて僕らは中学の頃、ある約束をした。
『ずっと一緒にいたいと時間が経っても変わらないなら、私たちが恋人になったあの場所で』
それから僕は親の都合で地方の高校へと入学することになった。
彼女の約束は僕がなるかもしれないと話して3日で考えたことだった。
「……」
当時携帯電話もスマホもなかったから、連絡手段は手紙だけ。
高校を卒業し、元々興味のあった情報メディアについて詳しく勉強できる大学を目指し、元いた街の近くへと一人暮らしをし始めた。
昔の友達を探してみようかと思ったけど、数年……たったの3年にも関わらず街は変わってた。知らない建物、なくなった建物。街の理が変わったと勘違いするほどの変化だった。
なんでもバリアフリー化とかデザイナー向け思考の街に変えるという施策があったらしい。そのおかげで僕の住んでたかつてのマンションは姿形もない。もしやと思って彼女の住んでたマンションにも足を運んだがやはりなかった。
大体わかってた。
愛は遠く離れて手紙だけではとてもじゃないけど、分かり合えないんだって……。
「ねぇ、そろそろ戻らない?」
「あ……うん、そうだね」
僕だって気づいたら違う彼女ができてた。彼女だってきっとそうに違いない。
高校3年の頃にはもう手紙は届かなくなってたし、向こうからも元気だからというのが定期的にくるだけでどこに引っ越したかの住所すら書かれてなかった。
生きてはいる。
けれど、この街にはもういない。
そういうことになるんだろう。
「おーい、聞いてるか?」
「考えごとだよ。ほっぺたつつくのやめろっていってるだろ!」
「そうだったかなー昔の君は抱きつき癖が酷かったって知ってるよ?」
なんでだっけ? 話したことあったっけ?
この街を一緒にまわるのをデートとして提案したのは僕だ。何かのきっかけで口にだしていたのかもしれない。
「そうか、そうなんだな」
「じゃぁ最後にあの場所に行こうよ」
「? あの場所?」
その話は親にも兄弟にも親友にさえ言ったことのない話だ。しかもまだ1年しか付き合ってない彼女に話した記憶はさっき以上にありえない。
他の彼女との思い出話なんてなんのメリットがある?
「どうしたの? さっきいってるよ」
待てという言葉の前に彼女はもう先に歩いてしまう。
まさかそんなはずはないと思いながらも彼女のあとをついてくと、
「ここだよね?」
かつてあった公園の跡地にたどり着いた。
「な、なんでしってるんだ? 話したことないだろ?」
「そうだね。君から話されたことはないよ」
君? 僕以外に知ってる人は昔の彼女しかいない。
「名字が違うから気が付かなかったかもしれないけど、似てるところない?」
なんのことだと記憶が掠れかかった時、ふと彼女が昔の彼女に重なった。
「もしかして……親戚かなにかなのか?」
「はずれ! 妹なんだ。親違いのね」
そしてこの後僕は彼女が高校を卒業することなく、亡くなってたことを知った。
泣きながら僕はお墓参りに彼女といくのだった。
愛から生まれたもう一つの命 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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