人ではないが人である人

バブみ道日丿宮組

お題:今年の村 制限時間:15分

人ではないが人である人

 活造りもいいけど、まるごとそのまま口に入れるのもまたいい。汚物が多いのがいかんせん口に苦々しさを与えてくるけどそれがその村の味。

 都会には都会の味、田舎には田舎。

「……さて」

 熟した果実はどうなっただろうかと、山の上から100年経過した街だったものを見てみる。

「うーん」

 都心だったというのに、なんというか村だね。

 人が暮らしてる風景はあるけど、収穫するような食べ物はあまりなさそう。

 わからなくもないかな?

 ニュースで大虐殺があったって報道された土地に住みたいなんて思いもしないものね!

 私だってそう。

 そんな気味の悪い場所なんて捨ててきれいな場所を作ってしまう。


「まっさらで赤く、赤く、純粋な赤に染まった大地」


 かつて父様が作り出した人の生き血でできた土地。それを私も作りたい。

 けど……けど、今のところ失敗でしかないの。

 欲求が強すぎるのがいけないのかしらね。

 どうして人をみると食欲が抑えきれないし、今しがたもおそらく今から向かう村のような街からきた登山者を切り裂いて、腸を口にしたところ。

「はぁ、どうしよう」

「だから楚々はギリギリまでしないようにと仰ってるのですよ」

「そうはいってもあなたはずっと私の影に入って止めようともしてないし、こぼれ落ちた血肉をおこぼれとしてもらってるじゃない」

 肩越しに影を振り返ると、私の動きと違う動きを影がする。

「それはこちらとしてもお腹はすくものでして、お嬢様が最低限の暴走で止めるぐらいはしてきましたよ」

 確かに100年前、この街を破壊する時私は暴走してた。掴んで砕き、引っこ抜き、かきむしる。様々な調理の仕方を悲鳴という心躍る音を心臓に響かせてた。

『全てを壊してはまた滅びかけてしまいますよ』

 ほぼ半壊した状態の私はその声と力封じの力で止められた。

 あのまま殺し続ければ、おそらくこの街は滅んで私は次の街、そして次の街へと足を運び続け、父様と同じことはできなかった。

「あのお父様が死ぬ時に生まれた執事だからこその力は凄まじいわね。それでどうにかしようと思わないの?」

「それは主君に反逆することですし、あなた様と同じ側の生物です。敵となったところで意味は持ちません」

 えぇ、食べ物がなくなったら皆死んでしまうものね。

「それに主よりのご命令であなた様の未来を見るのも役目ですので」

「そう、じゃぁとりあえず街の確認に行きましょうか」

 また暴走しそうになったらお願いと視線を送ると、影は私の影に戻った。


 結局のところ、街は放棄した。

 というよりかは、私の血を少しあげて増殖しやすいようにした。それがどんな味に変わってくのか少し興味深い。

 何より、獲物が立ち向かってくるというのも面白い。


 だから、また100年後会いましょう?


 ーーあなたたち

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人ではないが人である人 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る