第108話 FPSぅ?
「……(キラキラのお目々で私の膝をつんつんするヒイロ)」
「……(キラキラのお目々で私の裾を噛んで引っ張るライカ)」
「…………ひっ、卑怯だっ!」
「ゲーマーにとっちゃ褒め言葉だな」
「コノヤロウっ、触手転生姫伝説ドラグルシカル・アルファ(触手に侵食されたエルフの姫が触手で同族を襲う百合本)の隠し場所をお前のギルドにリークしてやるからなっ…………!」
「それは止めてっ!? て言うかなんで知ってるのっ!?」
ふん、妹さんと連絡出来るってことは、その向こうに居るお前のお母さんとも話せるって事なんだよバカめ。世の中の親は子供のセンシティブ本の隠し場所なんて当たり前に知ってる人種だぞ。
ベッドのマットレス退かさないと取り出せない場所とか、ベッドって時点で定番中の定番だよなぁ!?
「今は触手でエルフ耳責めがマイブームなんだよなぁ?」
「やめろぉぉおっ!?」
「お姉、詳しく」
「ヒイナちゃんマジで許してっ!?」
想い人のセンシティブ・フェチズムに反応したヒイナが私に詰め寄るが、すまんなヒイナ。コレは悪辣のエルフもどき(ドワーフ亜種の姿)に対するリーサルウェポンなんだ。切り札は切るべき時に切ってこそ切り札足り得るのだ。
しかしそこは強敵、私の思考を良く理解してるマコトはヒイロとライカにヤケクソ気味で説得をして、私が陥落する事になった。ド畜生がっ…………。
「て言うか、FPSぅ……?」
改めて渡されたソフトのパッケージを見る。そこには渋いおじ様が意味深な微笑みを浮かべながら、炎に包まれる瓦礫の街並みを歩いて行くような、とても精緻なイラストが描かれていた。
ふーん、イケオジじゃんね。コレでケモ度があったら推してたわ。
「そう。ファスト・パーソナル・シューティング。もしくはファスト・パーソン・シューティングと呼ばれる一大ジャンルだな」
「こんなん、初心者お断りが服着て踊ってるようなジャンルじゃないの? 当たり前だけどやった事ないよ?」
「そりゃもちろんお前、キズナなら余裕だろ」
「お前マジで私をなんだと思ってるの?」
「常勝無敗のリアルチートなろう系ラノベ主人公だが?」
「殺す」
社会的に死ね。
私は携帯端末からエルオンの内部掲示板にアクセスして爆弾を投下した。良く燃えるように有名人まとめ板と雑談板と前線攻略板に投げといたぞ。前線攻略板は完全にスレチだけど許せ住民。
「あくは滅びた」
「おまえぇぇええええええっ!?」
「本の内容付きだぞ☆」
人に物を頼むなら相応の態度があるよなぁ? 私は投稿を完了した画面を
「おまっ、そんっ……」
「ふんっ、ギルメンから微笑ましい顔で見られながら盛大に弄られろ」
「あ、悪夢だ…………、悪魔だ…………」
「ホレどうした、半額シール貼ってでも売り付けるんだろ?
私に頼み事するのに、ヒイロとライカを出汁にするとはいい度胸だよマコトちゃん。私が一番ピキるって分かるだろうに。
まぁそれだけ切羽詰まった頼み事なのかね。私もヒイロたちに期待されちゃ頑張らざるを得ないけども。
「で、詳細は? 流石に事情も話さずに私を使う訳じゃないよね?」
「…………あ、あぁ、うん。ちょっと待って立ち直るから」
「早うせいや」
予想以上に
いつの間にか母さんが淹れてくれた良い感じのお茶だ。母さんは床で呆然とするアホにも「落ち着いたら座ってちょうだいね」と言って、奴の分までカップは準備されている。
「…………GGST?」
「うん。そう。グローバル・ゲーム・サミット・トウキョウ。略してGGST」
確か、世界のゲームメーカーが自慢の新作を引っ提げて参加するリアルイベントだっけ?
「そこで行われるアマチュアとプロが入り乱れるエキシビションの抽選にゲーム仲間が当たってさ、でもそのエキシビション、
「いや、でもトリオで応募したなら、三人居たんでしょ?」
「それがさ、三人目は三人目でソロの部門に当たっちゃって、そっちで出るって言うから今大騒ぎなのよね」
「重複参加出来ないの? 部門別なら時間ズレてるでしょうよ」
「本戦ならワンチャンあったんだけど、予選があるんだよね。その予選は時間ズレてなくて、分身しないと重複参加は出来ない」
「じゃぁ分身しろや」
「相手に言ってくれや」
詳細を聞くと、そもエキシビションは既存のタイトルに新しくナンバリングタイトルとして新作が出るから、そのプロモーションも兼ねたお遊びらしい。
参加者はみんなGGSTの当日に新作に触れるので、ある意味では初心者である私に対しても平等だと言う。
いや嘘つくなよ。前作やり込んだ方が有利に決まってんだろ。
「だからこそ、当日までの間に是非、プレイして慣れといて欲しい…………」
「ええええ凄い嫌だぁー! 当日だけならまだしも、当日までの数日ずっとケモニウム不足になるじゃん!」
「頼む頼む頼むぅぅう! もし優勝出来たら、焼肉にプラスしてエルオンの中でお前の為の合コンを組むから!」
「あ? 馬鹿にしてる?」
「違う、俺の知り合いのテイマーを片っ端から呼んで、あらゆるペットモンスターとお前がどんちゃん騒ぎ出来る会場をセッティングするって事だ! その日のエルオンは、お前専用のハーレムだ!」
「よっしゃ任せろ絶対にお前の頭にエキシビションの王冠を被らせてやるよ期待してろ」
そんな訳で、私は急遽FPSなんてジャンルのゲームをプレイする事になった。
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