アレルギー持ちのケモナーは、電脳世界で無双する!
ももるる。【樹法の勇者は煽り厨。】書籍化
エーテルライト・オンライン。
第1話 エーテルライト・オンライン。
私はその日、病院の個室で両親に泣きながら土下座された。
頼むから止めてくれと。自分の命を大切にしてくれと。
人として当然のことを改めて説かれ、私は苦笑いしか返せなかった。
そして私はその日、自ら死に向かう行動を両親から禁止される。
「頼むからもう、触れ合い動物園には行かないでくれッッ……!」
……………………そう、私は極度の動物アレルギー。
ウサギを少し抱っこしたら発作が出て、治療しなければそのまま死ぬ程のショック症状が起きる。
この病室、ハタから見たら勘違いされそうな絵面だが、私は間違っても手首なんて切ってないし、睡眠薬を大量に飲んだりして無いし、目張りした部屋で煉炭なんて焚いてない。
私はただ、可愛い可愛いウサギさんやモルモットさん等を抱っこしてなでなでしてクンカクンカして毛並みに顔を突っ込んで深呼吸しただけである。
…………まぁ動物アレルギー持ちなら自殺と変わらない行動かもしれない。それは二万歩ほど譲って認めよう。
でも、待って欲しい。
父さんも母さんも、ついでにここに来てない妹も、猫抱けるじゃん? 犬撫でれるじゃん? 冷静に考えてズルいじゃん?
私だって猫吸いとか犬吸いとかしてみたいじゃん? その為なら命懸けるべきじゃん? ワンチャン平気かも知れないじゃん?
まぁ賭け皿に自分の命をベットして事に及んだら見事に素寒貧になりかけたわけだけどさ。
まぁでも、多大な迷惑かけたので暫くは大人しくします。はい。ごめんなさいでした。
「それで、なんだがな……、キズナはやっぱり、動物好きだろう?」
「うん」
心の中で僅かばかりの反省をしている私に、土下座から少しだけ顔を上げた父さんが当たり前の事を聞いてきた。
愛してると言っても過言じゃない。というか結婚したい。重婚したい。
この世のありとあらゆる脊椎動物と結婚したい。もふもふの毛並みやつるつるの鱗、すべすべの肌やぬるぬるの粘膜に包まれて愛を囁きたい。
人間の伴侶となりうる生き物が同じ人間しか存在しないこの世は間違っている。この世の神様って奴はこの世界にインストールするはずのデータファイルを絶対にいくつか紛失してやがるよ。間違いないって。
そう、そんな声を張り上げたい人間が、私である。
「それがどうしたの? いや、流石にこれだけ騒ぎを起こしちゃったし、私も大人しくするよ?」
「…………どれくらい?」
「二週間くらい」
「死ぬ寸前だった自覚ある?」
「あるよ?」
ただ、自分の命と動物愛を天秤に乗せると、些かならず自分の命が軽いだけである。
いやホント、申し訳ないとは思うんだ。父さんにも母さんにも何回迷惑かけるんだって、自分でも思ってる。でも私は動物が好きなんだ。止まれないだ。
「だからな、父さんたち、キズナの為に用意した物があるんだ。それを使えばキズナも動物欲を満たせると思うから、もう二度とこんな事はしないで欲しいんだ」
「用意した物?」
父さんがそう言うと、黙っていた母さんが何やら大きな紙袋を背後から持ち出し、私が横たわるベッドの上に置いた。
く、クソ重い…………。
な、なんだこのっ、超重てぇ物体はっ?
「こ、これは?」
「最近よく、CMでやってるだろう? 最新のVRゲームだか何だかいう…………」
「…………あー。なんだっけ、エーテルライトだっけ?」
巨大な紙袋の中を覗くと、VRゲームに必要なデバイス一式とゲームソフトが入っていた。
ゲームタイトルはエーテルライト・オンラインだったか。
四年くらい前に人類がやっと辿り着いた
当時はまだまだ世に出たばかりの最新技術であるそれは、粗が目立つ仕上がりではあった。だけど、ごく最近になって新しい技術が確立されたとかで、ほぼ現実と変わらない精度のフルダイブが可能になったそうだ。
その新式フルダイブシステムを使ったオンラインゲームタイトルの第一作目が、半年前に発売されたこのエーテルライト・オンライン。
第一作目とは言うが、新式システムのVR機器を作ってる会社とゲームメーカーが同じ系列であり、その繋がりに食い込めない同業他社はそのシステムを使った後追いの第二弾を制作出来ずに居るらしい。
つまり、エーテルライトはVRゲームとしては完全にトップを独走しているタイトルとされている。
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