リビングデッドだよ 佐々木くん

酒井カサ

第『蘇』話 交通戦争にご注意を

 佐々木が死んだ。

 こういう表現はぶっちゃけ不謹慎であり、あまり好ましいことではないことを承知で、それでもあえて言うならば、佐々木はギャグコメディみたいな死に方をしたのだ。その死に様といったらあまりにも滑稽で腹を抱えて爆笑必至だ。具体的にいうと――


「いや、これ以上はいわせねーかんな」


 事の核心に触れようとした瞬間に割り込まれた。

 全く、無粋にも程がある。せっかく人が心地よく語っていたというのに。だから、佐々木は死ぬんだよ、と言ってやろうと思ったが、それはあまりにも不謹慎なのでお口チャック。ああ、彼こそが霊柩車にひき逃げされて死んだ、ぼくの友人である佐々木だ。


「いや、誰だって止めるかんな。自分の死因を面白おかしく語られたのならば。さすがに見過ごせないかんな」

「そう怒るなよ、ゾンビのくせに」

「いいや、これは名誉毀損だっ!」


 厄介な切れ方をする故人。どうやらこいつの辞書には「死人に口なし」という言葉はないらしい。


 これだからリビングデッドは厄介なのだ。

 前述の通り佐々木は死んだ。


 しかしそのギャグコメディじみた死因に納得がいかなかったのか、地獄の底から這い上がってきた。まったく、大したフロンティアスピリットである。まあ、単に生き汚いだけかしれないけど。そうして蘇ったものの行き場所と生き場所を失ったようでぼくの家に転がり込んできたのだ。


「だけどよ、俺を恨む前に葬儀屋を恨むべきだろ?」

「ああ、今日にでも裁判を起こしてやる」


 そう息巻く佐々木だったが、ここで悲しいお知らせをしなければならない。まったく、そんな役回りだ。


「残念だが、佐々木じゃあ裁判に勝てないよ」

「なんでだ!?」

「だってよ、死者には法ではものなんだから」

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