第2話
週に2度。火曜日と金曜日。
お手伝いさんに来てもらっている。
家の中の掃除と洗濯をしてもらうだけなのだが。
ところが来てくれていたお手伝いさんが家庭の事情で交代になるそうだ。
なんでも、旦那が転勤になり引っ越すとのこと。
「申し訳ありませんね。ちゃんと引き継ぎますから」
恐縮する、中年女性のお手伝いさん。
「大丈夫ですよ。掃除と洗濯だけじゃないですか」
穏やかに応えるのは、老年に差し掛かった小説家である。
60代半ば。年齢にしては若く見える。
少し白髪が混じった黒髪にスラリとしたスリムな体型がそう見せているのだろう。
「今までありがとうございました。大した物ではないですが餞別としてぜひお持ちください」
小説家が菓子折りを渡す。
「あらあら・・申し訳ありません。では、今までありがとうございました。
それじゃあ、来週の火曜日に新しい担当が来ますので。よろしくお願いしますね」
そう言い残して、去っていった。
そして、次の週の火曜日。
午前10時。
玄関の呼び鈴が鳴った。
「はい」
「I家政婦サービスから来ました。よろしくお願いします!」
やけに元気の良い声。
「はい、今開けますよ」
玄関の扉を開けると、そこにいたのは。
ポニーテールの栗色の髪。
キャミソールにカーディガンを羽織った・・・・デニムのミニスカート。かなり若い女性だった。
唖然とする作家先生の前で、大きく右手を上げて大きな声であいさつをする。
「こんにちわ〜〜!新しく担当になりました立花ゆかりです!ちなみにH女子大の2年生です!!よろしくお願いしまーす!」
この日より、静かな生活は終わりを告げた。
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