第3話 火に焼べるモノ

 不安だ。目の前で鼻をヒクつかせている幼女はひとまず置いといて、■□□が何を意味するかについて考える。

 視野を半径1m、2mと広げる時、■が□になった。減ったと考えるべきだろう。幼女を助けたように視野を細く長く変える時は変わらなかった。幼女の傷を癒した時も変わらなかった。少なくとも視野を広げるのは自重しておこう。


「えっと、火の精霊様。精霊様に持って行くように言われてたモノ取ってくる。ちょっと待ってて?」


 お、おい。寒いぞ? と止める間もなく幼女は俺の視界から走り去っていった。急に静かになったな。何となく、寂しい気がした。


 しばらく待つと幼女が枝をいくつか持って戻って来た。俺の周囲に草などがないだけで、もう少し離れたところには木があるようだ。

 幼女が俺の目の前でかがみ、枝を差し伸べてくる。真っ白だな……白樺しらかばか? 短い枝に2枚ずつ葉が付いている。葉身は三角状広卵形、葉先は鋭くとがっている、基部は広いくさび形か切型。ふちには重鋸歯がある。何だ? 燃やせば良いのか?


「はい、火の精霊様。どーぞ?」


 何だろう、餌付けされてる気分だ。枝の葉っぱを1枚燃やすイメージで火を出すと、□がミリ程度回復した。おお、燃やせば回復するのか。

 もりもりと食べるように葉っぱを燃やしていくと、幼女が俺の真下に枝を配置し始めた。焚火みたいだな……。とりあえず■■■になったから良いか。


 ぐぅ~~~

「わぅ……」


 俺の回復が終わるまで座っていた幼女の腹がまた鳴った。小動物を狩るなら手伝ってやれそうな気がする。

 幼女の手首と燃え残った枝先をつなぐように火を浮かべると、驚いた後に「えっと、これを持つの?」と聞いてきた。聞かれても答えられないので幼女の体を覆うように薄く広がっておく。


「あ、あったかい。ありがと、私クーデ。火の精霊様、食べ物探しに行こ?」


 腹ペコ幼女の名前も分かったところで移動開始だ。

――――――――――

 焼べる くべる

 白樺は吹雪く頃に葉を付けない気がしますが、異世界ということで

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る