第2話 火相

 放火魔精霊、燃やした幼女に声をかけられる。字面最悪だが現実だ。今しがた燃やしてしまった子が青い火柱をたたえながら立っている。火の精霊かと問われたが、自分自身良く分かっていない。そもそも声が出ないので答えようもない。


「この火、弱めて?」


 えーと、どうだろう。火が消えるように念じると、あっという間に火柱が消えていった。考えた通りに火が出せるみたいだな。小さな火を周囲に作ってみる。集中しなくても出てきた。雪をかすように念じると周囲1mの雪が解け、枯れた大地が見えた。秋から冬になったのなら枯草があるはずだ。不毛の大地なのだろうか。


「ありがと、火の精霊様」


 また精霊様と言った子を見ると、身長140cmくらいの幼女がガクガクと震えていた。長袖が引きちぎられて半袖になったようなボロ服。尻尾も見るに狼耳の獣人か。茶毛はボサボサで生傷が多く、可愛らしい顏が台無しだ。こちらを見る琥珀眼は弱弱しい。

 火柱の中では寒くなかったのか? とりあえずぬるーい火で覆うようにイメージしてみる。常温って20度くらいか? 火って20度でくんだっけか? と疑問に思うが、幼女を覆った様子を見るに熱くは無いようだ。本当にどういう理屈なんだろな。


「あったかい。えっと、近づいてもいい?」


 幼女の前までの雪をかしてやると了承と取ったようで、ゆっくりと近づいてきた。あかぎれやり傷、打撲痕もあるのか。火で癒すことは難しいか? ろうそくの火を見ていたら癒されるみたいな……


「え? うぇ? わぁ♪」


 よわよわ幼女の傷が跡形もなく癒され、なぜか髪の艶や肌の汚れまで風呂上がりのようにキレイになった。泥汚れが落ちたからか、少し黒髪よりの色合いだ。ピコピコ動く耳とブンブン振られた尻尾、鼻息荒く爛々と輝く琥珀眼に一抹の不安を覚える。


「すごい、すごい! 痛くない! 寒くない! ピカピカ! ……わぅぅ」


 まくし立てていた幼女は、可愛らしい腹の音とともに一気に消沈した。さすがに食べ物は持っていないぞ。どこかに食えそうな物はあるかな?

 視界をさらに広げるように考えると半径2m弱に広がった。


■□□


 ん? ずっと表示されていた■が一つ□になったぞ? あれ? これ全部□になって何もできなくなるだけならまだしも、火が消えたら俺ってどうなる……めちゃくちゃヤバイ状況じゃね?


――――――――――

火相――ひあい。火の元や火のおこりぐあい

■■□――何かの指標

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