245 『アンデッドアーティスト』
サツキとミナトは三階に辿り着くと、二人の人物を発見した。
一人はサヴェッリ・ファミリーのボス・マルチャーノ。
もう一人は芸術家のカルミネッロ。
二人の存在を把握し、サツキが足を止めると、ミナトも立ち止まった。
「敵は二人、だね」
「うむ。行くぞ」
ミナトにアイコンタクトもして、二人は歩き出した。
天才芸術家。
イストリア人。
主にこのマノーラを拠点にして活動していた。
サツキがリラと訪れたカルミネッロ広場も、名前の通り彼の作品になる。
カルミネッロは『万能の芸術家』や『空間の魔術師』などと呼ばれたほど高い評価を得た。
が、それはずっと昔の話。
もう彼はいない。
死んでいる。
それでも、会ったこともない彼の顔をサツキは知っていた。
リラと共にバラクロフ美術館を巡っていたとき、カルミネッロの肖像画を見たからである。そこで知った。
そんなカルミネッロがなぜマルチャーノの横にいるのか。
――そうか。
なるほど思い当たることがないでもない。
――きっと、マルチャーノさんの術によるもの。
マルチャーノは手に骸骨を持っているのだが、この骸骨について、サツキはリディオとラファエルからすでに情報は得ていた。
曰く、
「ボスのマルチャーノには、『
とのこと。
死体を操る術を指すものだが、マルチャーノもそうした魔法の所有者であった。
つまり、死者を操る術を、マルチャーノは持っている。
――確か、魔法名は《
魔法の性質は。
――死者の肉体さえ残っていれば、その肉体を操作することができる。ただし、能力だけが肉体には宿り、人格は失われている。
いわば、ただの操り人形である。
――その手にある骸骨に魂を降臨させ、人格だけを骸骨に留め、能力を肉体へと移す。だったか。
魂と人格の在り方など、詳しいことはわからない。
この手のことに通じている『大陰陽師』リョウメイにでも聞けば、魂と魔法と肉体の関係性も理解できるだろう。
しかし、今はそれを気にする時じゃない。
今気にするべきは、マルチャーノの魔法がどんなものなのか、そしてなぜカルミネッロが
――国宝級の天才芸術家・カルミネッロの死体は国によって管理されるはず。それを奪ったか。いや、カルミネッロはこのヴィアケルサス大聖堂の中に描かれた宗教画なども手がけたらしい。その関係で、偉人であるカルミネッロを宗教側で保管していた可能性もあるな。そうなれば、裏で手を組んでいた宗教側とサヴェッリ・ファミリーには交渉の余地がある。この裏での交流は、死体の譲渡も可能となるばかりか、ここ大聖堂を拠点に戦いを仕掛けたことにつながる。そんなところか。
概ね、サツキの推察通りである。
だとすると、サツキにはおもしろくないこともあった。
――だとすると、まだ姿を見せていないだけで、ここにはほかにも有力な魔法を持ったアンデッドがいるかもしれないな。
この三階エリアの中でも、マルチャーノがいるそこは眺望がきく大きな窓が後ろにあり、いくつかの彫刻作品が並んでいるが、カルミネッロの周囲にはキャンバスがあるのみ。マルチャーノ自身は椅子に腰を下ろしている。
そのどこに隠してあってもおかしくはない。
マルチャーノとの距離が近づいていって。
サツキが歩みを止める。
「士衛組局長、
「同じく士衛組壱番隊隊長、
ミナトも名乗り出て、マルチャーノが椅子から立ち上がった。
「来ると思っていたぞ。しかし、士衛組だけか。『
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