228 『スパークルアロー』
風が吹く。
鬼火はこれによって散った。
流れるように火の玉が泳ぎ、ランダムな動きで無作為に敵を襲う。
火の玉の熱さに「あちっ」とうめく者たちが、ヒナやミナト、クコの剣で斬られてゆく。
また、ナズナの矢はなにより相性がよかった。
「えいっ、《
ナズナの弓は、《
左手の親指と人差し指を立てて魔法の弓を創り出すことができる。
これは、左手に装着したアクセサリーを媒介とするもので、ピンク色に輝く宝石のブレスレット――ここから弓状になった羽が出現し、そこに魔法で創った光の矢をつがえる。
光の矢は、ナズナの背中の翼から抜き取ることで創り出せる。
そして。
《
的中した相手を眠らせることができるのだ。
チナミに翻弄された相手を、ナズナが射抜く。
コンビネーションもバッチリだった。
バタバタと眠りに落ちてゆく。
「ナズナ、その調子」
「うん、チナミちゃん」
前よりもナズナの矢の的中率も上がっている。
それをナズナ以上にチナミが感じた。
リラはそんな二人を頼もしく思いながら、
「なにか、リラにもできないかな? チナミちゃん」
「たぶん、今はない」
答えて、チラとチナミがサツキを振り返る。
「……」
無口なチナミだからあえて言葉にはしないが、サツキには意見を仰いでいるのがわかる。
「人数と敵の強さ、それらを見て、参番隊だけでどこまでやれそうだ?」
サツキはチナミに問うた。
チナミは即答する。
「足止めくらい私たちだけで大丈夫です。それより、サツキさんたちはリラの《
「うむ。じゃあ、足止めは任せた。参番隊」
リラ、ナズナ、チナミを見て、サツキはそんなざっくりとした指示を出した。
「はい。参番隊がお引き受けします」
「三人で、がんばり、ます」
「では、階段までお供しましょう」
この大聖堂は、三階まである。
一階と二階は大階段で行き来できる。
だが、三階は少し構造が異なっており、ドーム型になった部分が三階であり、こちらとは螺旋階段でつながっている。
また、三階部分の面積は一階や二階よりもずっと小さい。それでも広い球場くらいにはなる。
サツキの予想では、この三階部分にサヴェッリ・ファミリーのボス・マルチャーノがいる。
「ボス・マルチャーノは上にいる。二階は一階よりは敵も少ないだろう。だから、ここだけ足止めしてもらえれば、三階までは四人で行けると思う」
「そうですね」
サツキとミナト、クコとヒナ。
この四人で辿り着こうというのだ。
その点、リラは心配していない。
二階が一階よりも敵の人数も少ないのなら、この四人だったら切り抜けられるだろう。
それよりも、やはり問題はリラたち参番隊だ。
大階段へ向かうその途中。
参番隊がここに残ってサツキたちを先へ行かせることが決まった今、リラはサツキに作戦を聞いた。
「あの、サツキ様。リラたちはどう戦えばよいのでしょうか。なにかあれば教えてください」
「一つに、大勢を倒すなり眠らせて動けなくして自分たちの安全を確保する方法がある。もう一方で、ただ俺たちの行く二階より上には行かせないために、敵の注意を引くことで翻弄する方法もある。どちらでいくかだが」
「注意を引く……それだけで、済ませられるのでしょうか」
「わからない。だが、できないこともないと思うぞ」
少し考えて、リラは言った。
「そうですね。言われてみれば、あれだけたくさんいる敵を、なにも倒す必要はありません。いろいろ試してみます」
「ああ」
要は、敵をサツキたちの元へと行かせなければいいのだ。
参番隊が自分たちで考えて実行してゆく。
そう決めて、リラは参番隊の隊長としてナズナとチナミに呼びかけた。
「ナズナちゃん、チナミちゃん。リラたち参番隊は、大階段の規模を観察し、それに合わせて作戦を立て、敵を先へ行かせないために動いていきます」
「うん」
「御意」
意思統一もできたところで、リラはサツキに告げた。
「すでに一つ、リラには作戦があります。観察結果にもよりますが、参番隊に任せてもらって大丈夫です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます