225 『パーフェクトアシスト』
サツキがカーメロに近づく。
距離が詰まってゆく。
その距離が三メートルを切ったとき。
カーメロはハルバードをぐるりと回して敵の武器を弾き飛ばし、そのままハルバードを別の敵へと投げた。
「うおおお」
「危ねえ!」
「なんとかよけられたぜ! 外しやがったな、カーメロめ!」
だが、カーメロの狙いはそれだった。
ニヤリ、とカーメロの口元が歪む。
「このボクが加勢したんだ。負けは許さない」
ついにサツキがカーメロとの距離を一メートル以内にすると。
右手がサツキに触れる。
「いってこい」
「はい」
これによって。
サツキはその場から姿を消した。
この直前。
まさに、カーメロがサツキに触れようというとき。
「今だ! 武器を失った今がチャンスだ!」
「やるぞおお!」
「うらああああ!」
そう叫んでカーメロに突撃してきたマフィアたち。
だが。
今――
サツキが消えた代わりに。
カーメロの右手には、ハルバードが戻っていた。
マフィアたちがそれに気づいたときには、カーメロのハルバードが猛威を振るうリーチの内側に、彼らはいた。
「消え……た?」
「いや、武器が!」
「武器がああああ!」
ハルバードが華麗に舞い、瞬く間にマフィアがばったばったと倒れてゆく。
不意を突かれた形になったマフィアたちだが、不意打ちという行為そのものにたいした意味はなかった。
彼らがハルバードの圏内に入ったからこそ起こった、自然な成り行きでしかない。
「フン」
カーメロはノールックで後ろにナイフを投げて、しゃがみ、背後からの攻撃に合わせて地面に転がったマフィアに触れる。
すると。
すでに戦闘不能になったマフィアが中空に現れ、ナイフの代わりに剣撃を受け。
味方に斬りかかったせいで、剣が容易に引けなくなったところへ。
ハルバードが鋭く突いた。
「パーフェクトだ」
これだけの敵をあしらうのも、カーメロには簡単なことだった。
その上で。
サツキをしっかりと部隊の元へと飛ばしたのである。
――パーフェクトだ。ありがとうございます、カーメロさん。
ここで、カーメロがサツキを部隊の元へと飛ばした工程とは、次のようなものだった。
第一に、投げたハルバード。
これを、あらかじめ《スタンド・バイ・ミー》の対象物に設定しておく。
いざハルバードが投げられると。
敵はこれをよけていった。
よけられるよう、適切な軌道と速度で飛ばしたのだ。
第二に、サツキへの接触。
そのタイミングを、ハルバードが先行する部隊の元まで届いたときになるよう狙った。
ハルバードが部隊に届いたところで。
サツキに触れ、《スタンド・バイ・ミー》を発動させたのである。
しかもその代わりに、ハルバードを失ったことで敵が攻め寄せるまでの時間と距離も計算にいれ、ハルバードが手元に戻って来たと同時に、それらの敵を一掃できるように考えて動いていたのだ。
すべてがパーフェクトだった。
そして。
こうした戦術によってクコたちの元まで飛んできたサツキは、目指すヴィアケルサス大聖堂入口の前で。
「今戻った。みんな、突入準備はいいか?」
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