219 『フォーメーションチェック』
突入を前に。
サツキは隊列を発表した。
「最前線はオリンピオ騎士団長、お願いします。統率者として、力と視野を持っています。そして、おそらく彼らは士衛組を甘く見ており、オリンピオ騎士団長を高く評価している。ゆえに、彼らはまっすぐオリンピオ騎士団長を狙ってくれます」
「ああ。任せてくれ」
「次に、士衛組を先へと通すために隊の左右を守ってもらいたい。これをスコットさんとブリュノさんとシンジさんにお願いします。スコットさんはバトルアックスを武器としますが、これは利き手によらず扱えます。シンジさんも素手での戦いを得意とするため左右の問題は小さい。しかしブリュノさんは右利きだから右側にいたほうが剣を振りやすい。よって、ブリュノさんとシンジさんが右側、スコットさんが左側を担当してもらえるとありがたいです」
「オレは構わん」
「同じく。了承したよ、サツキくん」
スコットとブリュノは異論もない。だが、シンジは疑問を口にした。
「もちろんぼくもそれでいいんだけど、ブリュノさんと二人でいいのかい?」
これにはブリュノが答える。
「いいのさ。なぜなら、彼のバトルアックスは攻撃範囲が広い。武器の大きさも性質も、大勢の敵を薙ぎ払うのに長けている。対してレイピアや素手は大勢を相手取るのを得意としない」
「なるほど。うん、わかったよ。任せて、サツキくん」
サツキがこくりとうなずき、最後にカーメロに目をやった。
「そして、最後尾はカーメロさんにお願いしたいと思っています。敵は後ろから追いかけてきます。それを、自らも前進しながら払わねばならない。もっとも難しいポジションです」
「確かに、それはボクにしかできないな」
後退する部隊の最後尾で敵を相手取り、味方を安全に逃がす役割をしんがりや後備えというが、これよりもスピーディーな展開で味方を後方より守らねばならない。技術とセンスが必要になる。
コロッセオで戦ったからこそわかる。これができる人材は『
「以上です。ついでにだけど、ミナトは全体を見ながらなにかあればサポートを頼む」
「了解」
「ナズナは空を飛んで移動し、弓をいつでも放てるように準備を」
「は、はい」
「ヒナとチナミもすぐ動けるように。場合によっては味方の緊急回避を、それぞれ上空と地中にする可能性を考えておいてくれ」
「オッケー」
「御意」
「みんながいてくれるから、リラの魔法は大聖堂に入るまでは温存でいい」
「わかりました」
リラがうなずき、オリンピオ騎士団長がにこやかに言った。
「瞬時にこれだけ的確な戦術立案ができるとは、さすが士衛組の局長だ」
「いいえ。これくらいは」
クコが尋ねた。
「サツキ様。わたしにはなにかありますか?」
「俺たちは、ひたすら突き進むだけだ」
「はい!」
クコの返事を聞き、サツキが作戦の伝達を終えようとすると、アシュリーも緊張した声で言った。
「あの……わたしは……」
「アシュリーさんはここで待っていてください。必ず勝って戻ってきます」
「……うん。わかったよ。わたしには、もうできることないもんね」
「もしほかにだれかが加勢に来てくれたら、その人に状況説明をしてもらえたら助かります」
「それくらいなら」
それくらいしか。
そう思いながら、アシュリーはなにもできないもどかしさを感じる。
スモモがそんなアシュリーの肩をポンと叩いて、
「まあ、わたしといっしょにここで待ってようよ」
「そうですね」
「わたしは鷹不二の人間で通信役だからさ、でしゃばるのもよくないしね。アシュリーちゃんのお報せを見て駆けつけた人にはやっぱりアシュリーちゃんが説明したほうが伝わるよ」
「はい」
アシュリーの敷いたお報せとは《
改めてアシュリーはサツキに向き直った。
「頑張ってね」
「はい。では、行きましょう」
サツキはみんなに声をかけた。
これより最終作戦が開始される。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます