172 『キープウェイティング』
「そうか。わかった」
ラファエルからの助言を受けて、サツキはうなずいた。
『ほかに、ボクたちがジェラルド騎士団長に関して得た情報はありません。あとの戦いはサツキさんとミナトさんにかかってます』
「ああ」
『それから、士衛組のみなさんの状況もお伝えしておきますね。ちょうど、ルカさんが玄内さんとも合流したそうですし……』
と。
少しだけラファエルから士衛組周りの情報を聞いたのだった。
話を終えると、サツキは礼を述べた。
「ありがとう。助かったよ」
『いいえ。少しでも役立てていればよいのですが。とにかく気をつけてください。ジェラルド騎士団長は本当に強い人です』
『頑張れよ! サツキ兄ちゃんとミナト兄ちゃんならどんなピンチだって大丈夫!』
「うむ。またなにかあったら連絡してくれ。こっちの戦いがどうなったのか、そのときに伝える」
リディオが『おう!』と明るい返事をして、通信が切れた。
会話が終わったことを察し、アシュリーが聞いた。
「なんだかいい情報があったみたいだね?」
「はい。懸案事項もいくつか解消しましたし、話しながらわかったこともあります。ミナトも結構疲弊してるみたいだから、俺もいってきます」
「もう動けるの?」
心配して手で身体を支えてくれているアシュリー。
「そんなに動けませんけど、まずはミナトに伝えておかないといけない情報もあるので」
サツキはアシュリーの介添えで立ち上がって、ミナトに呼びかけた。
「ミナト。話がある」
「了解」
キン、と打ち合う音を響かせて。
一秒としないうちに、サツキの横へと《瞬間移動》でやってくる。
「それで。なにかな? 向こうも待ってくれるかわからないし、手短にね」
「わかってる。今、リディオから情報が来た。ジェラルド騎士団長についてだ。教えてくれたのは鷹不二氏のヒサシさん」
「へえ。あの人」
鷹不二氏とは縁のあるミナトだが、そのつながりはオウシとトウリの二人と同門だったという一点であり、一応ほかにもコジロウやチカマルも共に学んだ間柄だというのはさておき、ミナトが知っているのはせいぜいスモモくらいのもので、それ以外の人たちのことはよく知らなかった。当然、ヒサシも先日サツキたちと同じタイミングで初顔合わせをした程度の仲でしかない。しかし、ミナトの鋭い嗅覚はヒサシの人間性の妙味を嗅ぎ分けているのか、その名前を聞くだけでおかしそうに笑うのだった。
「なにか、気づいたことでもあるのか?」
思わずサツキが尋ねるほどに、ミナトはかみ殺すような笑いをしていた。
「いやあ、まるで。なにもわからないや。でも、きっとなにか企んでるよ。そんな気はする」
声をやや落とした二人の会話は、二十メートル以上も離れたジェラルド騎士団長には聞こえていない。
ジェラルド騎士団長は言った。
「戦術立案が済んだか。いや、その様子では相談している段階か。待つのもやぶさかではない。先刻も待ってやった甲斐ある攻防が楽しめた。しかし、戦術も決まってないのでは、待つ必要もあるまい」
「まいったなァ、やっぱりいつまでも待ってはくれませんか」
ミナトの剣がジェラルド騎士団長の背後で閃く。
これを、ジェラルド騎士団長のバスターソードが豪速で風を切り防御した。
驚くほど速い不意打ちでも、ジェラルド騎士団長には幾度となく跳ね返されてしまう。
が。
それでよかった。
ミナトにとってはそれで充分、サツキから話を聞くことさえできれば問題ないのだ。
サツキとアシュリーがまばたきを一つすると。
もうミナトは舞い戻っている。
「僕が相手を続ける。度々ここに戻って立ち回るから、サツキは普通にしゃべっててくれたらいい」
一瞬で移動ができる《瞬間移動》なら、いちいちここまで来てもそう時間差も生じないということだろう。
「相変わらず無茶苦茶だな。わかった、時間もない。さっそく話すぞ」
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