148 『テレポーテーション』
「わかったよ。準備はできてる。いつでもいいぜ」
サツキから作戦を聞き。
ミナトはあっさりとそう言った。
が。
ジェンナーロが銃を撃った。
乾いた音が響く。
「いつでも、だと?」
「……いやだなァ、そう急がなくても相手になりますとも」
一瞥して視線を戻し、ミナトは薄い微笑を浮かべ目を閉じた。ミナトは動くことすらなく、サツキも動かなかった。銃弾は外れた。
「くっ」
「こいつ!」
「斬撃か!」
逆に。
動いたのは、ジェンナーロたち三人のほうだった。
カチ、と音が鳴ったときには、ミナトの刀が一度抜刀されまた鞘に戻っていたのである。
これによって、斬撃が飛ばされたのだ。
その斬撃は《
ただの斬撃であり、ミナトにとってはなんでも攻撃だった。
フレドリックはサツキから受けたダメージのせいか避けきれず、ジェンナーロとマサオッチがなんとか避ける。
正確な狙いがつけられない今、どれかが三人にヒットするように飛ばした七連撃である。
後ろにいるジェラルド騎士団長には向けていないが、彼は身じろぎもしなかったらしい。ハッキリと視認できないミナトにも、それがわかった。
――あの人、ぴくりとも動かなかった。相当やり手みたいだ。やっぱりその他三人とは格が違う。
『
アルブレア王国騎士の中でも特別な地位にある彼を、ミナトは知らない。しかし、ただ者ではないことは肌感覚だけで理解できてしまう。
「やれるか、フレドリック」
ジェンナーロに問われて、フレドリックは苦しげに答える。
「ああ」
だが、もうフレドリックがその実力を発揮できることはないだろう。それがジェンナーロとマサオッチにはわかった。
ミナトはにこりとして、
「やろうか、サツキ」
「うむ」
サツキの肩に左手を置いたとき。
二人はその場から姿を消した。
《瞬間移動》。
『神速の剣』
この魔法を知っている者はほとんどいない。
見せても見えない。
だから知られることがない。
例えテレポーテーションのようなことが起こったと思っても、確定させられない。
それが強みの一つとも言えるし、一瞬で別地点に移動できる強さの前ではなんてことない要素とも言える。
むろん、ミナトには《瞬間移動》がなくとも圧倒的に過ぎる剣術の腕があり、その剣はあるいは《瞬間移動》と変わらぬほどの速さで抜刀から一閃、納刀までしてしまうのである。
そのミナトが持つから、《瞬間移動》をもって『神速の剣』と成す。
ただし、障害物をすり抜けることはできないのがミナトの《瞬間移動》唯一のネックであったが、これも最近になって《すり抜け》の魔法を持つことで解消した。
一応、《すり抜け》にも人体を透過できないという条件はあるが、自由度が恐ろしく上がる。
それらの総合化で、ミナトは神速の剣を振るった。
移動した場所は、マサオッチの後ろ。
そこは、マサオッチが《
一瞬の移動で、マサオッチやジェンナーロが気づく前に、サツキとミナトは攻撃モーションに入っていた。
「《
「《
サツキの掌底は、マサオッチを。
ミナトの剣撃は、ジェンナーロを。
それぞれ捉えていた。
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