106 『マエストロ』
イストリア王国の首都、『
マノーラ騎士団がそれであり、彼らは警察組織かつ軍医騎士であるため、街の人々からも身近で慕われる存在だった。
特に団長は街の人々引いては組織の仲間たちからも尊敬の念を集める、名実共にマノーラの顔と言える一人なのである。
名は、
別名を『マノーラの巨匠』または『マエストロ』といって、治安を任せるに足る確かな実力と人望を備えた人物ともっぱら噂される。
背は一八四センチと高く、ガタイもいい。四十代の半ばに差しかかる働き盛り。
ナズナが見たところ、晴和王国の
これはチナミの感想でもあった。
ちょうど士衛組がマノーラに来たその日、オリンピオが通りを歩いていてすれ違ったのだが、チナミがそんな感想を言っていたのを思い出す。今見ても同感だった。ヒロキによく似た安心感を与えてくれる人だ。
「やあ。みんな、よくやってるかな」
「みなさん、お疲れ様です」
オリンピオの隣にいる青年はまだ若く、二十歳にならないくらいか。
『画人戦士』
マノーラ騎士団の新人騎士である。
背は一七三センチほどだから平均的な範囲だが、横にいるオリンピオと比べるとやや細身に見えてしまう。
エルメーテは礼儀正しく気さくで人が良さそうな雰囲気がある。
彼もまた、
「おや。キミは……」
さっそく、オリンピオがナズナとロレッタに気づいた。
初対面のナズナに、オリンピオは闊達に挨拶をした。
「リディオくんたちからの情報によると、キミが
「は、はい。音葉、薺……です」
「ロレッタです。はじめまして」
二人の少女の挨拶を受け、オリンピオも名乗り返す。
「よろしくね、ナズナくん。ロレッタくん。私はマノーラ騎士団団長、
「
ほかのマノーラ騎士団の騎士たちよりも若く人当たりの柔らかなエルメーテに、ナズナも少し緊張が和らぐ。
オリンピオはナズナとロレッタを交互に見て、
「今、マノーラの街ではサヴェッリ・ファミリーとアルブレア王国騎士が士衛組を狙っているが。ナズナくんは士衛組だ。そのナズナくんといっしょにいたら、ロレッタくんに危険が及ぶ可能性もある」
「あ、はい……そう、ですね」
それはナズナもわかっていたことだ。しかし、ロレッタを途中で他者に託すのは気が引ける。
「だが、ロレッタくんもナズナくんといっしょにいたほうが安心できるようだし、私とエルメーテくんが同行しても構わないだろうか?」
「え」
意外な申し出に、ナズナはちょっと驚いた。
すぐにそれは有難いことだと冷静に思い至る。
――もし、戦うことになっても、オリンピオさんたちは、強そうだから、ロレッタちゃんも安全かも。
しかし言葉が出るまでには、しゃべるのが得意でないナズナには少々時間のかかることだった。
エルメーテがしゃがんでロレッタに聞く。
「いっしょに行ってもいいかな?」
「うん。いいよ。ね? ナズナお姉ちゃん」
「あ、う、うん」
うなずくナズナに、エルメーテが「ありがとう」とお礼を述べる。
「それがいい。さて、そういうことだ。みんな、私はこの子たちと共にゆく。みんなも気をつけて励んでくれ」
オリンピオがマノーラ騎士団の面々に声をかけると、「はい」と力強い返事が返ってきた。
「よし。では行こうか。ナズナくん、ロレッタくん、エルメーテくん」
こうして、ナズナはマノーラ騎士団の騎士団団長・オリンピオと新人騎士・エルメーテといっしょに行くことになった。
この判断は、ロレッタの安全を確かに担保することになり、そしてまたマノーラの顔役オリンピオを重要な場所へと連れて行くことになる。
その頃。
占星術や手相占いのようなものではなく、怪異の力を借りて方針の良し悪しを占うもので、陰陽術であるらしかった。
「それによると、や」
「はい」
「リラはんら士衛組の未来は、この日この場所マノーラでの戦いが明暗を左右することになるようやで」
そんなことを言ったのは、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます