121 『バイタイムショー』
コロッセオでは、十三時になると『司会者』クロノが舞台に上がってしゃべり、次いでレオーネとロメオを呼んだ。
スペシャルゲストの登場に会場が盛り上がる。
レオーネとロメオは、この『ゴールデンバディーズ杯』の顔でもある。二人の強さと活躍を評してできた大会なので、『ゴールデンバディーズ』を見られた客は大喜びだった。
クロノが二人に話を聞いて、そのあとも二人が試合を観戦すると言って、十三時半には次のプログラムに移った。
準決勝第二試合。
『コロッセオの王子様』
これもまた、サツキとミナトの試合に続いて会場中を驚かせることになった。
前回大会準優勝のバディー、于淵と温韋が敗れたのである。
その上、相手のヒヨクとツキヒはまだ十三歳。サツキとミナトと同い年の
試合を見ていたミナトも、思わず二人の強さに感心したほどだった。
一度は負けた相手だが、最初から相手の魔法を知り対策して戦えば次こそ勝てると思っていた。しかし、二人の魔法にはまだミナトの知らない続きがあるらしい。
「これは、一人じゃあ勝つのは大変そうだ。サツキには戻ってきてもらわないとねえ」
そして。
結構な激戦を制したヒヨクとツキヒには、『司会者』クロノからの提案で休憩時間が与えられることになる。
「さて! まもなく十四時になります! 本来であれば、このあとすぐに決勝になるところです! しかし! 激闘を繰り広げてくれたヒヨク選手とツキヒ選手にも休憩時間は必要でしょう!」
この提案に、観客たちはヒマを持て余すことになることを思い、冷ややかな反応を示した。
そこにすかさず、クロノは宣言する。
「フェアで、両バディーが全力を尽くせる試合を行うために、少しばかりショータイムを挟みたいと思います!」
ショータイムの言葉に観客たちの注目が集まると、クロノは告げた。
「ここからは、コロッセオの顔でもあります『バトルマスター』ロメオ選手にバトルをしていただきます! 相手は決まっておりません! 戦いたいと思った方は一階の受付にお越しください! 承認された方から順番に舞台に上がっていただきます!」
挑戦したい観客はだれでもオーケーという話だ。
これには一度ロメオと戦ってみたかった魔法戦士も勇み、ロメオのバトルを見たかった人たちも歓喜した。
「うおおおお! ロメオさんのバトルが見られちまうのかよ! よっしゃああ!」
「キャー! ロメオさんを見られるなんてサイコー!」
「おれ、シングルバトル部門でまだ二勝しかしてないんだけど、こんなおれでも挑戦してもいいだよな?」
「あのロメオさんと戦えるチャンスなんかそうそうないぞ! いってこいよ」
「お、おう。だよな!」
「あ、あたしも、ロメオさんに闘魂注入してもらってこようかしら、ぐふふぅ」
「ちょっとアンタ、それ迷惑だからやめときなさい。試合見たい人からキレられるわよ」
「マジでロメオさんと戦えるってんなら、受付に行かないとな! あと七勝で挑戦権を得られるはずだったが、それが少し早まっただけだ。やってやるぜ!」
様々な反応を示す人たちがいる中、さっそく受付に向かう挑戦者を力尽くでかきわける大男がいた。
「どけどけ! ロメオを最初に倒すのはオレだ! レベルの低い試合ばっか見せられていらついてたんだ! オレにロメオとやらせろ!」
挑戦希望者たち十数人が並ぶ受付をズカズカと進むが、大男が受付に着いた頃には、小柄な青年がもう舞台に通じる通路を歩いていた。それには気づかず、
「おい、オレが最初だ。いいな?」
「すみませんが、お並びください」
受付のお姉さんにそう言われても、大男は並んでいる人たちに、
「オレが先だ。文句はねえよな?」
とガンを飛ばす。
「ど、どうぞ」
先頭に並んでいた青年がそう言ったことで、満足げに青年の前に割り込むが、その青年は続けて言った。
「でも、最初の挑戦者の人はもう行っちゃいましたよ」
「な、なんだと!?」
今から出て行っても試合が始まる直前か、あるいは始まっているかもしれない。大男は不満顔で舌打ちしたのだった。
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