68 『セミファイナル』

 クロノが登場する選手たちについて話し出す。


「ついにセミファイナルだ! 各ブロックの勝者が出そろい、この長かったトーナメントも残り四組に絞られた! セミファイナル第一試合は、AブロックとBブロックの戦いになるぞ! まず、Aブロックは先の戦いでも圧倒的な強さを見せつけてくれた前回大会優勝バディー! スコット選手&カーメロ選手! 最早語ることもあるまい! 最強は、今年も彼らだ! 今の所は! そんな最強に挑むのは、実力未知数のルーキーコンビ! クオーターファイナルでは不戦勝ということで、ますますその実力はわからないが、今度のダークホースは可能性も秘めている! おーっと! ここで、『かいしん胴禁棲健斗ドーキンス・スコット選手&『万能の戦士ミスター・パーフェクト居千河召呂オルセン・カーメロ選手の入場だー!」


 スコットとカーメロが舞台にあがってくる。

 一試合目にも強さを見せた彼らには、さらなる期待がかかり、声援もすさまじい。彼らを観に来た人たちも多いから当然だが、この二日目は彼らを中心に回っている空気さえある。


「よくわからんルーキーなんざぶっ潰しちまえ!」

「スコットー! おまえが最強だー!」

「ひゅー! スコット愛してるぜー! おれはおまえを観に来たんだー!」

「今年はレオーネとロメオにリベンジするんだろ! 不戦勝のダークホースなんか粉々にやっちまえー!」

「カーメロさーん! こっち向いてー! きゃー」


 堂々と出てきた彼らに続き、サツキとミナトも舞台へ歩いてゆく。


「こちらも来ました! ダークホース参上! 『波動のニュースター』しろさつき選手&『しんそくけんいざなみなと選手! 今が、真の力を周知させる時だ! やってくれ!」


 しかし、サツキとミナトへの声は応援ばかりではなく、実力への疑問や批判も混ざっている。


「大番狂わせしてくれよー! ルーキー!」

「お、ルーキーの登場か」

「やっと出てきたな。だが、本当に強いのか?」

「微妙じゃね? さっきも不戦勝だったし、運良くここまで来たのかもだけど、ビギナーズラックは終わりだろ」

「おれ、早くスコットとカーメロが于淵と戦うの見たいわ。さっさと片づけてくれねーかな」

「サツキくんミナトくん好きー! 頑張ってねー!」

「あれが噂のダークホース? なんか頼りなげ?」

「レオーネとロメオが認めてるんだって? 見せてもらおうじゃねえか! どんなもんなのかをよ」

「全力でぶつかってけよー」


 応援席にいたクコは心配そうに、


「大丈夫でしょうか。なんだかあまり歓迎されていないみたいです」

「いろんな客がいるのだから、おかしなことじゃないわ。ここで勝って、ファンを増やせばいいのよ」


 と、ルカがクールに言った。


「でも気に入らないわね。チナミちゃん、ナズナちゃん、応援するよ!」


 ヒナが声をかけて、チナミとナズナがうなずき、リラも笑顔で「リラもいっしょに」と言って、四人で声援を送る。


「サツキ、ミナト、頑張れー!」


 このヒナの声といっしょに、チナミとナズナは「サツキさん、ミナトさん」とさん付けで、リラはサツキをいつものように様付けで頑張れーと応援した。ヒナは続けて「負けるんじゃないわよー!」と付け足す。


「いけー! サツキー! ミナトー! うおー!」


 バンジョーは楽しそうに旗を振り、アキとエミが踊る。


「頑張ってー! サツキくーん、ミナトくーん!」


 アシュリーも声をあげる。


「ほら、クコちゃんも」

「せーの」


 と、アキとエミに促され、クコも二人と応援したのだった。

 サツキとミナトにとっては出て行きづらい状況だが、それでも顔をあげて舞台にのぼった。

 が。

 向こう側に待ち受けているスコットとカーメロを見て、サツキもミナトも、外の声が気にならなくなった。


「強い。それがわかるね、同じ舞台に立つだけで」


 ミナトにそう言われて、サツキは表情を硬くする。


「どうせ勝つなら、このくらいの相手じゃないとだろ?」


 くすりとミナトは笑った。


 ――まだ《ダイ・ハード》を受けてもないのに、そんなに硬くなっちゃって。


 笑っているミナトに、サツキはむっとして言った。


「おまえは本当に緊張感がないな」

「でも、サツキみたいな顔で戦うよりずっとマシだろう?」

「む……。ま、まあな」

「うん。じゃあ、改めて気合入れて行くよ」

「わかってる」


 ふう、とサツキは小さく息をついて目を大きく開いた。

 瞳は、緋色の光を吐く。


「ようこそ。ルーキー」


 そう言って微笑んだのは、カーメロのほうだった。それも、じっとサツキを見据えながら。

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