28 『アドバンテージ』

 ふと、サツキは気になったことを質問した。


「《ダメージチップ》の魔法……あれって、一人につき最大500点しかダメージを受けないんですよね?」

「ピンポーン。だから、この勝負はアタシ次第なの。アタシがサツキくんに500点を与えれば、ミナトくんをつぶせるでしょ」

「そうなると、マドレーヌさんはもうこれ以上のダメージは受けない?」

「ピンポーンピンポーン! ここからのマドレーヌちゃんは無敵なのだ!」

「そ。この通り。ワタシは自由に動ける。力が弱まるわけでもない」


 と、マドレーヌは胸を張り力強くミナトに言った。


 ――一見、ワタシたちは未だに超有利。いや、実際、優勢であることは間違いない。けど、ワタシが先に無敵状態になるとは予想してなかった。


 先に500点を取られてしまったのがマドレーヌであることは、彼女たちにとって望ましいことではなかった。


 ――足技使いで肉弾戦タイプのバージニーに対して、ワタシは剣を使うから直接攻撃を受けることは少ない。


 マドレーヌが剣技と魔法を駆使すれば、たいていの場合、無傷で勝ててきたからだ。


 ――バージニーは肉弾戦でどんどんダメージはかさむから、本当は先にやられるならバージニーのほうが好都合だった。でも問題ない。長期戦が難しくなっただけ。ここは強気に、こっちがまだ有利だって見せておかないとね。


 そうした意図で、マドレーヌは強気な姿勢を見せたのだった。

 バージニーはにこにこと説明を続ける。


「マドレーヌちゃんは無敵だけど、アタシはサツキくんを相手に310点以内にダメージを抑えないといけない。でないと二人合わせて1000点になって、アタシたち二人が同時に気絶しちゃうからね。逆に、サツキくんたちは二人で500点を超えないように戦う必要があるわ。その差は200点。まだまだ勝負はわからない」

「ですね」


 状況は理解した。


「うん。そういうわけで、アタシがどれだけ圧倒できるかが鍵ってこと」

「ポイントもわかりました。でも、圧倒されるつもりはありません。俺が勝負を決めます。ミナトにばっかり良いところ取られていられませんしね」

「おっ、言うね~」


 楽しそうにバージニーが微笑んで、それから手の中にトランプを出した。マジックみたいに現れたトランプに、サツキは目を瞠る。


「じゃあ始めよ? おいで、サツキくん」

「……。では」


 もう、会話をしている時間は終わったらしい。

 サツキが駆け出すと、バージニーも地面を蹴った。


「ついにサツキ選手とバージニー選手も動き出した! 真正面からぶつかっていくー! 蹴りと拳の正面衝突だー!」

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