13 『アナリシス』

 ルカたちが話していた間、アシュリーたちも別の会話をしていた。

 アシュリーがシンジに質問する。


「ねえ、シンジくん。さっきのミナトくんだけど、ミナトくんならカルロス選手の攻撃も避けられたんじゃないかな?」

「だろうね。たぶん、本人たちが修業って言ってる通り、ただ相手の魔法を観察して分析して戦うために、あえて受けたんだと思う。まさか、あのストレートをくらってあそこまで平気だとはボクも予想外だったけど」

「そっか。やっぱりミナトくんって強いんだね」

「あはは。うん、相当タフだね」


 苦笑していたシンジだが、「あっ」と指差した。


「今度はサツキくんが前に出るみたいだよ」

「本当だね。頑張ってー! サツキくーん」


 アシュリーも応援して、ヒナがキッとにらみ負けじとサツキに声をかける。


「とっととやっつけちゃいなさーい! サツキー!」

「サツキさん、頑張ってください」


 と、ナズナも応援する。

 チナミはナズナとヒナの間で、ここまで黙って見ていた。だが、カルロスを見てつぶやく。


「前回ベスト8らしいけど、この実力ならAブロックにいた前回ベスト8のコンビより弱い。それでも、このコンビは観客から高く評価されてた。その差を埋めるのは、魔法しかない。カルロスって人の魔法、結構厄介かもね」

「だ、大丈夫かな?」


 不安がるナズナに、チナミはなんの感情も見せない無表情でうなずく。


「うん。大丈夫。もう一人の魔法にもよるけど、サツキさんとミナトさんのほうが強いと思う。ずっと」

「そ、そうだよね。二人共、すごく、強いもんね」

「うん」


 再度チナミはうなずき、心の中でつぶやく。


 ――もしこのコンビが前回優勝コンビを倒す実力があったとしたら、話は変わるけどね。やっぱり魔法次第、かな。


 ブリュノはだれに言うでもなく言った。


「彼ら、なかなかやるね。彼らの実力は、まさにベスト8にふさわしい。見事なベスト8だよ、フフ」


 チナミはそれを聞いて、


 ――それはどっち?


 と思った。


 ――もし、魔法なしでもベスト8だと言えるなら、かなりの強敵。でも、未だ見せていない魔法を折り込んでの評価なら、意味は変わる。私が見たところ、魔法なしではベスト8の実力はないと思うけど……。


 気になってチナミは質問することにした。


「あの、ブリュノさん」

「なんだい?」

「ブリュノさんは、あの人たちの魔法を知っているんですか?」

「ああ。知ってるよ。たぶん、ね。確か知っていたはずさ」

「そうですか」


 そこで口を閉じたチナミを不思議に思ったブリュノだが、あえて聞き返すことはしなかった。


 ――サツキくんに似て分析が好きなのかな? いや、分析癖って感じかもね。おもしろい子だ。すぐに聞きたくなるところなのに、自分で考える。きっとこの子も、サツキくんのように伸びるのだろうね。素敵な仲間たちだ。


 フフフ、となぜか笑っているブリュノを、チナミはちょっとだけ気味悪く思った。だが、嫌な感じでもない。おもしろい人だと思った。


 ――サツキさんって、本当にいろんな変わった人に好かれる人。……それはともかく。この人の見立てを信じるなら、前回優勝コンビを倒すまでの実力じゃない。だとすれば、魔法さえ攻略できれば……。サツキさん、頑張ってください。敵の術中にはまらなければ、勝てる試合だと思います。

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