68 『ファイリング』
夕食のあと、サツキとミナトはラファエルとリディオの元を訪ねた。
ラファエルはクールな瞳でサツキを見る。
「今日はお二人で来たんですね」
サツキは、昨日もこの二人の元を訪れたが、今日はもっと詳しいことを知りたくて『
『
「またなにか聞きたいことがあるのか?」
リディオが明るく聞いて、サツキが答える。
「失踪事件について、もっと詳しく聞きたいと思って。あと、コロッセオに出場している魔法戦士の情報も」
「今日戦ったヒヨクくんとツキヒくん、それと出場はしなかったけど選手登録したサンティ選手って人だよ」
ミナトが付け足し、リディオが笑顔で言った。
「やっぱりそこらへんは気になるよな、ミナト兄ちゃんならさ」
「そりゃあねえ。ヒヨクくんとツキヒくんは、僕の古い友人とも知り合いみたいでさ」
「ああ、確か陰陽師の人だな」
「そう、それ。いやあ、二人はよく知ってるなあ」
「まあな! おれたちは『
さすがにミナトはリディオとすっかり打ち解けている様子だった。サツキがヒナたち弐番隊と浮橋教授の元へ行っている間などに、ミナトはリディオとラファエルと遊んでやったりもしていたらしいのだ。その点、ラファエルもサツキに対するよりもリラックスしている感じもある。
ラファエルはデータを見ながら教えてくれた。
「まず、サツキさんとミナトさんが今日戦った相手、ヒヨクさんとツキヒさんについてからお話ししましょうか。この二人は、
「所属?」
首をかしげるミナトに、ラファエルは言葉を続ける。
「彼らは、晴和王国では有名な
「なるほど。そこで、リョウメイさんとつながるのか」
と、サツキはやっと合点がいった。
リョウメイとは、『
「リョウメイさんが運営してるやつかあ」
ミナトもそのあたりのことは知っていたらしい。
そもそも、王都少年歌劇団『東組』は王都で活動するアイドルのようなものだ。歌って踊って、舞台をする。また、王都少女歌劇団『春組』という少女アイドルもいて、サツキはひょんなことから王都と
王都の夜の華。
それが王都少年少女歌劇団のアイドルたちを形容する言葉として晴和王国中でよく知られている。
ほかにも、晴和王国の中でも三つの大都市で活動するアイドルがいて、それぞれが次のような名称になる。
古都少年歌劇団『
緑都少年歌劇団『
岳都少年歌劇団『
この世界とサツキの世界は地理的にもよく似ていて、『王都』天都ノ宮が東京二十三区あたりとすれば、『
この四都市で主に活動している歌劇団たち。
そんな歌劇団の中で、リラは王都を訪れた日、たまたま出会ったリョウメイの勧誘を受け、一時的に王都少女歌劇団『春組』に加わったことがある。舞台にも立ったし、メンバーとも仲良くなった。今も手紙のやり取りをしている。
サツキも、陰陽術で指針を示してくれたリョウメイには恩もあるし、リラといっしょに手紙を送っているのだ。
「でも、歌劇団の見習いなのに、もうそんなに人気があるなんて、なにか秘密が?」
そんなサツキの疑問に、リディオが答える。
「大した秘密はないぞ。歌劇団は人気があるけど、メンバーとして舞台に立てるのは各組五人だけ。ほかに見習いの子が後ろで踊ったり演技でも脇役をしたりするんだ」
「つまり、バックダンサーやエキストラのような役割があります。歌劇団の見習いですし、ルックスもいいから、未来のスターを見つけたいファンや、原石を応援したくなるファンもいます」
ラファエルの説明を聞いて、やはりアイドルのような感じなのだとサツキは思った。サツキの世界のアイドルでも、CDデビュー前から見習いや練習生のようにレッスンしながらファンが応援してくれている子もいる。
「ただ、中でもヒヨクさんとツキヒさんは才能を見込まれて、『東組』に加入させる前提でこっちに来ているみたいですね」
「こっちに来ると、なにかあるのかい?」
ミナトが尋ねると、リディオが言った。
「おう。コロッセオは世界中から挑戦者も来るエンターテインメントだからな。そこで実力と人気をつけて、最初から人気者として売り出したいって計算なんだぞ」
「コロッセオで実力を認められた、強さと人気。それは良い宣伝材料になります。今度の『ゴールデンバディーズ杯』の優勝あたりがいい落としどころでしょう」
「つまり、そこでの優勝を持ち帰って『東組』加入ってことか」
「あとは、メンバーの入れ替えタイミングを待つ感じかもしれませんね」
と、ラファエルはまとめた。
「これでヒヨクくんとツキヒくんの謎は解けたね。サツキ、そうなると、あとは失踪事件だよ」
「ああ。そうだな。大事なのはそっちだ」
リョウメイについても気になっていたが、そちらはいろいろと引っかかりも取れてすっきりした。
――気になっていた部分が大体わかった。二人の人物ファイリングはすごいな。さすが『
続いて。
肝心の失踪事件へと話題が移る。
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