23 『デイツー』
ステージの中央にやってきたクロノは、会場全体を見回して、開幕の挨拶に入った。
「本日もお越しいただきありがとうございます! これより、午後の部、魔法戦士たちの戦いを始めます! 司会はワタシ
試合数を聞いて、シンジが言った。
「今日はダブルバトル部門も参加者が多いな」
「そうなんですか?」
サツキには平均値がわからない。昨日はサツキとミナトの試合のほか、前に二試合あった。計三試合とバトルマスターによる特別マッチという流れだ。
しかし、今日は特別マッチもなく、五試合もある。
「いつもだと、一日に二試合か三試合ってところかな。シングルバトル部門は自分一人だけで気軽に参加できるけど、ダブルバトル部門はバディが必要になるからバディとの予定やコンディションも合わせないといけない。戦い方も難しい。観戦する側からは、レオーネさんのおかげもあってダブルバトル部門のほうが華やかで人気があるんだけど、参加者ってなるとシングルバトル部門が大多数なんだ」
「確かに。ダブルバトル部門の敷居は高いですよね。俺とミナトも、まだダブルバトルの戦い方もわかっていませんし」
と、サツキも納得する。
「あとはやっぱり、ダブルバトルの大会があるから、最後の追い込みとか、調整とか、参加者が増えてるのかも」
「なるほど。そうですね。俺とミナトも、あと二回勝たないといけませんから」
「今日含めて、残り三日。そのうち二回勝つのは大変だけど、頑張ってね! サツキくん」
「はい」
ステージ上では、クロノが簡単なルール説明をしていた。舞台から落ちたら負け、気絶も3カウントで負け、そのほか戦闘不能状態も負けとなる。また、相手を殺すことは禁止されている。
そして、ルール説明を終えると。
クロノは会場全体に呼びかけた。
「みなさん、準備はよろしいですかー?」
歓声が上がる。
これから始まる試合をだれもが待ちきれないみたいだ。さすがにこのイストリア王国最大の興業なだけあり、盛り上がりは凄まじい。
「それでは、最初の試合を始めていきます! 登場していただきましょう、本日の初戦はこのお二人です」
初戦は、なかなかの実力者同士の戦いにも思われた。
共に二十勝を超えた魔法戦士で、見応えのある試合になった。
続く二試合目にミナトがセッティングされているとなると、最初の二試合で盛り上がって欲しいという意図を感じる。
サツキの予想通り、初戦の魔法戦士たちが下がり、二試合目に出場するミナトと相手の選手が通路を抜けて光の差す場所に姿を現すと、また歓声が響いていた。
「ミナトくん、まだ二日目なのに人気者だな」
シンジは自分のことのようにうれしそうだ。
選手二人が階段をのぼる間も声援が飛び交う。
特にミナトへの応援は顕著で、
「昨日見てたぞー! 今日も頑張れよー!」
「レオーネさんとロメオさんにみたいになってくれー!」
「今日は本気を見せてくれるんだろうなー!?」
「期待してるぞー!」
など、温かく迎えられているのがわかる。
舞台の中央付近にまでやってきた選手二人を、『司会者』クロノが紹介してゆく。
「夏の終わりに吹く風が涼しい本日、この円形闘技場コロッセオは熱気に溢れています! 第二試合、会場のボルテージはますますアップしているぞー! それもそのはず、ステージに上がったのは『神速の剣』
レオーネとロメオの名前が出た影響なのか、割れるような声援が会場からは聞こえてくる。
「一方、そんなミナト選手の前に立ちはだかるのは、『ソードブレイカー』
エヴァンゲロスは、身長一九〇センチ近く、筋骨隆々でガタイがいい。年は二十二歳。背中にはやや大きめの剣を背負っているが、エヴァンゲロスが大きいせいで逆に小ぶりに見えるほどだ。彫刻のような顔を引き締め、エヴァンゲロスはミナトを傲然と見おろす。
エヴァンゲロスの鋭い眼光を物ともせず、ミナトは緩やかに言った。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしく」
両者、挨拶を済ませると、『司会者』クロノが戦闘開始の合図を出す。
「共に挨拶を交わして、正々堂々たる戦いが始まります! エヴァンゲロス選手が強さを見せつけるのか、新進気鋭のスーパールーキー・ミナト選手が今日も新風を吹かせるのか! それでは参りましょう! レディ、ファイト!」
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