お笑い種(ぐさ)

一盃口

第1話

 読者様が笑って下さらないと、企画に参加している体になりませんが、黒歴史、お笑い種をちいと話しましょう。


 中3の頃の話になります。僕は、中学受験なるものを受けなかったので、初めて県統一模試を受けました。そこでの結果への歓喜は大きかったことでした。こんな僕が途方もない偏差値を出して、あの、空の上の久留米大附がもしかしたら受かるのかもしれない! そうしたただ普通の人間としての驚き。こんなフツーな僕が、そう驚きました。


 しかし、自分が特別な人間であると、どこか僕は知っていました。マリカーのGBAをマイブームとして中1の自己紹介に出したり、学校の成績トップを巡って戦ったり。いじりが本格的にどこか歪んだ行為だと僕だけが認定したり。この頃には自分の障がいの存在も明らかになりましたし。


 この頃、好きな人がいました。ぶりっ子で、声がうわついてて、マトモでまあ、女子らしい趣味を持って、特徴的に青いリュックを背負った。

 僕は、結ばれてしまえばどちらもを不幸せになるだろうな、と思い避けていました。彼女を僕のヘンな考えについて来させることは大変でしょうし、第一、こんな奴と関わったら彼女まで僕のような笑い者になってしまう。僕にすれば、その彼女たちの明るい宮廷サロンに赴くことは疲れるだろう、と思いました。そんな不必要な社交術よりも先に覚えるものがあるだろうな、と。もしかしたら、色恋など恥ずべきものという考えもありました。


 僕は当時久留米大附の過去問を「『受かったら東大だな、ロマンだな、』と思いながらまさか受からないだろうけど、そういうロマンっていいよな」、と遊びで解いていました。別に受けもしないくせに。

 そんなあるとき、彼女が僕の自習室に来たことがありました。あの時は、僕は彼女には絶対に手の届かないところにいかなくちゃならない、と思って、もはや彼女は名前を知らないであろうその高校の問題を必死に問いている振りをしていました。僕は関わっちゃいけないやつだ、とアピールするために。



 我ながら、分からん。でも僕は、感情だけで恋愛なんてできなくて、僕と世界のためになる話を一緒にできるだとかの、言い訳が欲しいと、今でも思うのです。

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