第5話 黒い雀

窓から外を見ていると小さな鳥が枝に留まっている

雀に見えるが黒いのだ

「玲子さん、お弁当をたべよう」

舞子がお昼にさそってくれる、私はお弁当を持って

屋上に行く。


屋上に行くとびっしりと雀がいた。

私が立ち止まると、舞子が不思議そうに見ている

もちろん彼女には見えないのだろう


雀たちは、屋上にいる学生に留まっている

肩にも腕にも頭にも乗っている

「舞子、今日は教室で食べましょう」

理解して舞子は戻る


「えー今日は多数の生徒の具合が悪くなり休校とします」

午後は家に帰る事になる

「舞子、外に出ないでね」念を押して私は神社に行く。

「美成いる?」

「鳥のことね」

美成はめずらしく巫女姿をしていた。


「この鳥は霊魂ね、死霊がここまで大量発生をしているのは

 天変地異かもしれない」


私は「死霊が大量に発生して人に害を与えてる感じ?」

美成は不思議そうに

「悪質な感じがしない、妙な現象でわからない」


スマホが鳴り始めた、見ると「弾道ミサイルの緊急通報」の

文字が表示された。

「ミサイルが飛んでくるの?」

私たちは庭に出てみる。

「この街に落ちてくる」

美成は空の一点を見つめて指さす。


彼女が指さす方向に向けて、大量の黒い雀たちが舞い上がる

どれほどの死者がこの土地で死んだのだろうか、数万?数百万?

何千年も前からの霊魂がまだ居るのか


雀たちはミサイルに向けて突進をしている

「玲子、建物に入って」

社殿に入ると美成と一緒に伏せた。


重い地響きが発生する、ミサイルが地上に落ちたのか。

美成から「家に帰ってなさい」と言われて、社殿から送り出された。

家族とTVを見ていると

「某国からのミサイル実験で本土に落下した」と

速報が流れている。


ミサイルは誰も居ない河川敷に落下していた。


ミサイルがどこを狙ったのかは判らない。

ただ土地に居る霊魂達は、子孫を守るためにミサイルに向かったと思える。

朝にはもう雀たちは居なかった。

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